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『ブギーポップ』アニメ化にあたり心がけたことは? TVアニメ『ブギーポップは笑わない』プロデューサーインタビュー

2019.01.03 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

 原作小説の刊行開始から20年、TVアニメ『ブギーポップは笑わない』が明日1月4日よりついに放送開始となります。

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 独特の世界観、雰囲気で多くのファンを魅了する本作について、今回TVアニメのプロデューサーを務める田中 翔さんにインタビューを実施。20年の節目でアニメ化となった経緯から、アニメ化にあたって心がけていること、視聴のポイントなどをお伺いしました。

「ぜひともまずは3話まで観てください。」

――原作小説シリーズの刊行開始から20年経ってのTVアニメ化ですが、今回TVアニメ化に至った経緯をお聞かせください。

 刊行開始から20年が過ぎたんだな、と自分がふと思ったことがきっかけだったと思います。自分はライトノベルみたいなものを読んでこなかったのですが、『ブギーポップ』シリーズだけは読んでいました。

 高校生のとき、たしか修学旅行か何かに行く電車のなかで読もうと思ってたまたま書店で手にとった作品が、20年経っても変わらずに今も続いている。それほどに魅力的な作品を自分が(プロデューサーとして)こういう立場になったこともあり、ぜひやってみたいとわがままを通させてもらいました。

――田中さんの推しでTVアニメ化が決まったんですね。

 自分のわがままですね。やっぱりどんな企画も、強くやりたいと願う誰かがいないと動かないものなので。20年の月日が経って、この作品をまったく知らない世代がキャラクターと同じ高校生になっているので、彼らに読んでもらいたいなという気持ちもありました。

 エンタテインメントの変遷はいろいろとありましたが、『ブギーポップ』シリーズはその最初の枝分かれのあたりにある作品なので、面白く読めるんじゃないかな、と。

――セカイ系のハシリと言われてますね。

 そうですね。だから、20年経って逆に新しく映るんじゃないかと思ったというのが考えとしては先だったと思います。

――原作者の上遠野浩平さんから要望はありましたか。

 上遠野先生からは原作が現状22巻まであるので、どのあたりをアニメ化するんですか、という話が最初にありました。そこで『笑わない』シリーズの1巻目から始めたいというところからやりとりさせていただいて、結果として代表的なエピソードをやることに落ち着きました。

――映像的な要望はなかったのでしょうか。

 上遠野先生は、基本的にはすべて(の思いを)小説に込めている、ということでした。つまり、小説から読み取ってくださいと。本当によく考えられている小説なので、映像化するにあたっていろいろ考えながら作っています。

――この作品の魅力はどのようなものだとご自身は考えていますか?

 実はセカイ系という言葉は自分的にはピンとこないんです。ただ、この作品には読んでいるうちに、どんどん引き込まれてしまう不思議な魅力がありました。いわゆる主人公というものが存在するようで存在しない、複数のキャラクターの視点から語られる物語が展開されていって、断片的だったブギーポップという存在というか現象が次第に鮮明になっていくという……。

 誰しもが自らの人生においては主人公にほかならないという感覚は、今までに感じたことのない面白さがあって、一番の魅力であると思いました。この作品からインスピレーションを受けた人たちから、いろいろな作品が生み出されたというのもよくわかります。

――創作作品ではキャラクターにハマることが多いと思いますが、こうしたキャラクターを押しださないタイトルで、どの部分にハマったのでしょうか。

 ファンタジーですから、実際にはあるはずがないのですが、もしかしたら自分の知らないところでこんなことが起きているのかも……といったリアリティが感じられるところでしょうか。刊行開始から20年が経った今でもその気持ちはかわらずですね。

 竹田くんの視点で言えば、なにか大きいことが自分の知らないところで起きていて、それが知らないうちに終わっているというのがファーストエピソードである『笑わない』のお話ですが、ものすごくリアルだなって思うんです。

 実際にあるかないかはさておき、人生ってそういうことの連続なので。荒唐無稽なように見えて、しっかりと地に足のついたファンタジーが描かれているからこそ、とてもワクワクするんです。もしかしたら!という想像力の世界に浸れるのが『ブギーポップ』シリーズの面白さなんだと、自分は思っています。

――アニメ化にあたって心がけたところは?

 まさしく自分の知らないところで起こりうる、思いも寄らない出来事をどう見せていくかです。それは単純に不気味さであったり、日常生活に潜む小さな違和感のようなもので、そういう凹凸を描けたらいいなと思って、スタッフとはいろいろ話しました。実写ドラマのような映像に仕上がっているのは、現場としても監督としてもそういう意識があったからだと思います。

 実際に観ていただけないと説明しづらい部分なので、ぜひとも1話、2話、3話……と続けて観てほしいなと思います。特に『笑わない』は断片的に観ると伝わりづらい部分があるので、3話まで続けて観ていただければその魅力と仕掛けの面白さが必ず伝わると思っています。

――それを表現するために工夫したところはどのあたりでしょうか。

 色づかいであったり、画面上の効果であったり、モブの描き方などでしょうか。アニメーションはやはり絵なので、どうしても受ける印象が軽くなりがちです。だからこそキャラクターたちがそこにちゃんと生きている印象をしっかりとつけるために画面の見栄えには気をつけています。

 また、ドラマをつくるにあたって、自ずと雰囲気が感じられるように、ちょっとした仕草や芝居など、細かい部分にもこだわって作っています。

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――20年前とは町並みの印象が変わっていますが、背景的な部分も現代的になってるんですか?

 そもそも原作には、当時の時代感やアイテム、町並みたいなものをベースにしたお話があまりありません。(時代を関連付けるのは)携帯電話の有無くらいですね。いわゆる古さを感じさせるものがあまりなく、物語の印象が変わらない、古くならない作品だと思っています。

 今回の作品に関しては、キャラクターは基本的に携帯電話を持っていますし、細かいところも違和感がないように現代風にアレンジしていますが、物語として大きく変えたところはありません。町並みなど、見栄え上の現代感みたいなところだけですね。

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――同じ事件を違う人物からの視点で積み重ねていく原作をアニメにするにあたって、どのような検討がなされましたか。

 やり方として、当初はわかりやすく主人公を作ってしまおうかという話もありました。でも、それはもはや『ブギーポップ』ではないという話になって、小説の通り、いろんな人たちの視点をアニメ的に散りばめていくスタイルをとっています。そのあたりはシリーズ構成・脚本の鈴木(智尋)さんが本当にうまくシナリオに落としこんでいただけたので、非常に面白く仕上がっていると思います。

 同じ事象をたくさんの人が見ているが、そこに感じる印象は人それぞれに違うという部分が、折り重なるようなドラマになっている原作なので、それぞれの心理描写など、いろいろなものをじっくりと描くことができる小説であれば、多少長くても味わいになるのですが、それをそのまま映像で見せようとすると、どうしても冗長になってしまいます。そういった部分を大胆に整理していくことで、テンポよく飽きさせない構成に仕上げることができたと思っています。

 故に、シナリオに対してこちらから言うことはほとんどありませんでした。脚本の鈴木さんと監督の夏目(真悟)さんが、これまでの作品でも一緒に組んできたという信頼関係もあって、非常に上手くいったと思っています。

――原作を知らなくて、今回初めてTVアニメで『ブギーポップ』に触れる若い方々に、楽しみ方のコツを伝授していただけますか?

 これは『ブギーポップ』の特徴でもあるのですが、登場人物のほぼ全員が物語における何らかの関係者であり、中心になっている事件を、それぞれ異なる視点から見ている主人公でもあるため、全てのキャラクターの言動に意味があり、その言動には物語を解き明かす断片が隠されています。

 だからこそ、それぞれのキャラクターの心情をよく考えながら見てもらえるとより楽しめると思います。全てのキャラクターを魅力的かつ個性的に描いているので、どのキャラクターも味わい深く、好きになってもらえるのではないかと思います。

 また、原作を読んだことがないという方にはぜひTVアニメを見た後に原作の小説も読んで欲しいと思います。TVアニメとはまた一味も二味も違う『ブギーポップ』の世界を楽しむことができるはずです。その面白さに、きっと夜中に徘徊したくなること間違いなしです。

 『ブギーポップ』っていったい何なんだろうか、と考えながら観ていただくのも面白いかもしれません。一見して本格ドラマのなかに出てくる幻想的なキャラクターに見えるんですが、それがどういう意味をもって出てくるのか。

 人それぞれの視点でまったく見え方が違っていて、それが死神に見える人間もいれば、親友に見える人間もいるし、いわゆる都市伝説にしか思えない立場の人間もいる。見る角度や見る人間によって、物事の形というものが変わっていく様は非常にリアルな部分です。このリアルさは、今だからこそ意外とリンクするものがあるんじゃないかと思います。

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――ここに注目してください、みたいなポイントはありますか?

 構成の仕方が非常に特殊なので、一度見ただけでは内容の全てを理解するのは難しいかもしれません。ぜひ何回も見て欲しいと思います。意図的に違和感みたいなもの映像の随所に散りばめているので、見飽きることなく、1回観た人でも、もう1回観たいと思っていただけるはずです。

 特に「笑わない」は1話から3話まで、全てが複雑に絡み合っている物語なので、2回目、3回目と見ていくうちに、新たな発見があると思います。また各話ごとでも面白く作っていますが、通して見ると面白さが3倍になる作り方をしていますので、まずは3話まで続けて観てください。原作を読んでいない方でも、そのままシリーズにハマってもらえると思います。

――キャスティングについてもお聞かせください。

 どなたもすばらしい演技だったので、役によっては誰に演じていただくか、すぐには決まらないことも多々ありました。しかし、ブギーポップだけはふたつのキャラクターを完全に演じ分けないといけないこともあって、『ブギーポップ』のキャラクターをよく読み込んでもらっていて、オーディションのときから際立っていた悠木さんに満場一致で決定した次第です。

 よくある二重人格とも違って、宮下藤花とブギーポップという精神的にまったくリンクしないふたつのキャラクターを見事に演じ分ける悠木さんは、まさにハマり役だと思います。

――読者と待ち望んでいたファンに向けてメッセージをお願いします。

 原作から作品が大好きなファンの皆様も、まだ原作を読んだことのない方も、まずは騙されたと思って観てみてください。気がつくと自分の感想や意見を誰かに話したくなっているはずです。1話、2話、3話、4話…と続けて見ていくうちに、新しい発見があったり、どんどん考察することが楽しくなっていくアニメーションに仕上がっていると思います。

 またこれは原作の魅力でもありますが、非常に奥行きのある物語ですので、アニメのあとは、ぜひ小説を読んでください。何度も楽しめる癖になる味わいが広がっています。

 そして『ブギーポップ』という小説の根幹にある魅力は、他人事などは存在していないということです。どんな他人事にも当事者がいるように、人それぞれにそれぞれの人生があって、誰もが主人公でもあるということです。どんな他人事であっても、自分の目から見たらどう映るのかを一度考えて欲しいと思います。

 またブギーポップが作中で語る言葉にもぜひ注目していただければと思います。彼の言葉はどんなときも真っ直ぐなので、時には冷たく聞こえることもありますが、とても考えさせられるものがあります。そんな哲学的な部分も魅力の一つですので、ぜひ明日1月4日からの放送を楽しみにお待ちいただければと思います。

登場キャラクター

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第1話“ブギーポップは笑わない1”あらすじ

 竹田啓司は、同じ学校の後輩でもある恋人の宮下藤花を待っていた。

 しかし約束の時間が過ぎても彼女は現れず、連絡も通じない。

 日も暮れ始め、あきらめて帰ろうとした竹田の視界に涙を流しながらふらふらと歩く男の姿が映る。

 どう見ても普通ではない男の姿に、竹田自身も、そして周囲の人間たちも我関せずを決め込んだそのとき、不思議な人物が男に駆け寄ってくる。

 大きなマントに身を包み、奇妙な帽子を被った不思議な人物。ソレは竹田との待ち合わせをすっぽかした宮下藤花と同じ顔をしていて……。

DATA
■『ブギーポップは笑わない』
公式サイト:http://boogiepop-anime.com/
公式Twitter:@boogiepop_anime

ON AIR:2019年1月4日(金)よりAT-X、TOKYO MX他にて放送開始

AT-X/
初回1時間特番1月4日(金)21:00~22:00
レギュラー放送毎週金曜 21:00~21:30
≪リピート放送≫
【初回1時間特番】1月6日(日)21:30~22:30
レギュラー放送毎週日曜 21:30~22:00
【初回1時間特番】1月7日(月)13:00~14:00
レギュラー放送毎週月曜 13:00~13:30
【初回1時間特番】1月9日(水)29:00~30:00
レギュラー放送毎週水曜 29:00~29:30

TOKYO MX/
【初回1時間特番】1月4日(金)22:00~23:00
レギュラー放送毎週金曜 22:30~23:00

テレビ愛知/
【初回1時間特番】初回1時間半特番1月11日(金)27:05~28:35
レギュラー放送毎週金曜 27:05~27:35

KBS京都/
【初回1時間特番】初回1時間特番1月4日(金)24:00~25:00
レギュラー放送毎週金曜 24:30~25:00

サンテレビ/
【初回1時間特番】1月4日(金)24:00~25:00
レギュラー放送毎週金曜 24:30~25:00

BS11/
【初回1時間特番】1月4日(金)23:00~24:00
レギュラー放送毎週金曜 23:00~23:30

STAFF:
原作=上遠野浩平(電撃文庫 刊)
原作イラスト=緒方剛志
監督=夏目真悟
シリーズ構成・脚本=鈴木智尋
キャラクターデザイン=澤田英彦
副監督=八田洋介
総作画監督=筱 雅律、土屋 圭
美術監督=池田繁美、丸山由紀子
色彩設計=橋本 賢
3DCG監督=廣住茂徳
撮影監督=伏原あかね
編集=木村佳史子
音響監督=はたしょう二
音楽=牛尾憲輔
音楽制作=KADOKAWA
アニメーション制作=マッドハウス
製作=ブギーポップは笑わない製作委員会

CAST:
ブギーポップ/宮下藤花=悠木 碧
霧間 凪=大西沙織
末真和子=近藤玲奈
竹田啓司=小林千晃
新刻 敬=下地紫野
紙木城直子=諏訪彩花
早乙女正美=榎木淳弥
田中志郎=市川 蒼
百合原美奈子=竹達彩奈
エコーズ=宮田幸季
谷口正樹=八代 拓
織機 綺=市ノ瀬加那
飛鳥井 仁=細谷佳正
安能慎二郎=長谷川芳明
衣川琴絵=阿澄佳奈
スプーキーE=上田燿司
水乃星透子=花澤香菜

©2018 上遠野浩平/KADOKAWAアスキー・メディアワークス/ブギーポップは笑わない製作委員会

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