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『進撃の巨人』巨人はなぜ体重が軽いのか? 生物学的に考えてみた!!

2022.02.27 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

 2009年より漫画の連載が始まった『進撃の巨人』。原作漫画は昨年2021年に完結し、アニメも最終章となる『The Final Season(Part.2)』が放送中です。

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 クライマックスに向けて物語はいっそう盛り上がり、これまでの謎や伏線も回収されていっています。しかし、解決していない謎もあります。それのひとつが……

巨人とは一体どういう生き物なのか!?

 巨人の能力や弱点、行動の特徴など、巨人との戦いに勝つための研究はアニメの中でもされてきました。ですが、巨人とはどういう生き物なのかという生物学的な解析はあまりされていません。

 巨人の体は想定される重さよりも軽く(劇中では、比重が人間と比べて3分の1程度といわれていました)て、そのため大きさのわりにとても俊敏に動けるのだと語られていますが、その理由も不明です。

 インターネットで調べたり、知恵袋で実際に同じ質問をしたりしている人がいますが(現在は削除されているようです)、明確な答えは見つかりませんでした。

 本記事では、巨人の体がいったいどうなっているのか、“軽さ”に注目して考えてみます!

 さて、今回は巨人とは何者かを生物学的に考えるのですが、そのまえに生物とは何かを復習しておきましょう。生物には三つの条件があります。

1:外界から膜で区切られていること。
2:代謝(細胞分裂、エネルギー合成など)を行うこと。
3:自己複製(子どもを産む)を行うこと。

 巨人には体があるので1は満たしています。2は微妙ですが、傷の修復を行っているので満たしていることとしましょう。しかし、3の自己複製についてはできないはず……。ということは、巨人は生物ではないのかもしれません。

 これでは“生物学的に考える”というのは語弊がありますね。なので、記事のタイトルを修正しておきましょう。

『進撃の巨人』の巨人はなぜ体重が軽いのか? 科学的に考えてみた!!

 ということで、気を取り直していきましょう。次に考えるのは巨人の体重です。具体的な体重は不明ですが、判明している情報から考察していきます。なお、重さを求める上では“BMI(Body Mass Index)”を援用します。

 BMIは人間の身長と体重から肥満度を求めるための数値です。“BMI=体重Kg÷(身長m)2”で、BMIが22となる体重が適正体重とされています。

 巨人の身長は小型から超大型までいろいろありますが、一般的な巨人は3~15メートルほどということなので、本記事では仮に10メートルとしておきます。その巨人が適正体重だったとすると、

22(BMI)=X(kg)÷102(身長2)
X=22×102(kg)=2,200(kg)

 巨人は想定の3分の1ほどの軽さだったということから、約733kgと推定されます。ちなみに7mの巨人は360kgほど、3mの巨人なら66kgほどです。

 実写映画版では人間が巨人を投げ飛ばすシーンがありましたが、重量挙げの世界記録が200キロ超(怪力ギネス記録は600キロほど)ということを考えると、巨人のサイズによってはギリギリできそうです。小型の巨人なら肉弾戦でも闘えるかもしれない軽さですね。

巨人はなぜ軽いのか?

 巨人の体重に関してある程度仮定ができたところで、次はその理由について考察していきたいと思います。

仮説1:発泡スチロールのような構造となっている

 発泡スチロールは、ポリスチレンを微細な泡で発泡させ硬化させた素材であり、非常に軽量です。何らかの方法によって、巨人の構造を発泡スチロールのようにできれば10メートルの巨体でも軽くなるはずです。

 発泡スチロールはの重量は発泡の程度により変わり、保冷箱などで一般的に使われる硬さの物は30倍ほどに発泡させたものとのこと。密度は0.03くらいとなっており、人体の密度は1くらいになるので30分の1の重みになります。

 ……これは軽すぎる! 発泡の程度を変えればちょうど3分の1の重量になるように調節できますが、その場合は体が硬くなりすぎてアニメに出てくる巨人のような滑らかな動作はできなくなってしまいそうです。とはいえ、骨や歯など部分的には適応できる部分がありそうです。

仮説2:中身が空洞になっている

 巨人になったからと言って体を構成する物質が変化するというのは考えにくいかもしれません。巨人のうなじ部分に埋まるような形で巨人と一体化するということは、巨人の体は人間の体に似た物質でできているのではないかという考えからたどり着いたのがこの仮説。

 表面だけしっかりと作っておいて中身を空洞にすればどうでしょう? 身軽になり、中空構造なら竹のようなしなやかさも身につけられるかもしれません。しかし、この説の場合、中身が空洞ということですから巨大なバルーンと構造的にはほぼ同じわけで、体に“たわみ”ができてしまいます。

 作中で中身が空洞だと感じられる描写はありませんでしたし、エレンが食べられてしまった時も巨人の体の内側にはみっちりと肉体が詰まっているように描かれていたため、この説もなさそうです。

 しかし、こちらも部分的には採用の余地があると考えられます。巨人が発生する際には大量の蒸気が発生しています。体内の水分を気化させて膨張させることができれば。巨人の体積を稼ぎつつ高い圧力で体を支え、軽量化につなげることができる……はず。

仮説3:水分を徹底的に除いている

 体の構成を変えず、肉抜きもせずに軽くするには、ボクサーが軽量前に汗を流すように水分を抜くしかありません。考えてみれば、巨人は体温が高く、発生する際に体から湯気が出ている描写も、もしかすると水分を抜くためだったのではないでしょうか?

 人間の体の65~70%ほどが水なので、体から水分を徹底的に除いた場合、体重は3分の1くらいになるはずです。巨人の口の中が映るシーンを思い出してみると、全体的にしっとりした感じではなくて、部分的に粘ついているように見えた気がします。

 水分がほとんどない状態で僅かな唾液が出ているために、あのような粘っこい感じになったのかもしれません。

ついに巨人の秘密が明らかに!?

 色々考えてみた結果、“仮説3”がいい線まで迫っている気がします。水分を除けば肉は硬くなるので、巨人の強さや破壊力にもがつきます。また、“仮説1”と“仮説2”も“仮説3”を補助する役割としてはなかなか有力になりそうです。

 “仮説1”の滑らかに動けないという点は骨にはあまり関係ないですし、巨人は人間とは体のつくりが違うわけですから、骨全体が海綿質(スポンジのように立体的な網目構造)となっていても問題ないハズ。

 “仮説2”に関しても、血管内部や泌尿器官、膵臓など、巨人の行動パターンである“人間を捕食して吐く”という行動にかかわらない部分であれば空気で体積を嵩増しつつ軽くすることができるのではないでしょうか。筋肉などは水分を減らして固くなっている状態なので“肉体が詰まっている”という見た目もパスできます。

 なにより、巨人発生時の水蒸気も“体から水分をなくしつつ“仮説1”と“仮説2”に必要な空気を確保している”という、体を作る原料(体内に取り込む空気)の調達と体の精製プロセスと説明できます。

 本当にこの仮説が当たっているのかどうかは巨人を解剖して調べないと分かりませんが、それ以外の物語の謎は1月より放送が始まった『進撃の巨人The Final Season Part.2』で明らかにされていくでしょう。アニメ『進撃の巨人』がどんな結末を迎えるのか。これからのラストスパートが楽しみです!

参考文献及び資料

TVアニメ『進撃の巨人』The Final Season公式サイト
『進撃の巨人』作品公式サイト
Wikipedia:『進撃の巨人』、発泡スチロール、重量挙げの世界記録一覧、ボディマス指数
サントリーのエコ活“水大辞典”
大和化学工業株式会社公式サイト

※画像は公式サイトをキャプチャーしたもの。
(C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会

文・渡辺晴陽

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