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アニメ『ガンダム00』これぞ未来のSDGs!? 太陽光発電衛星と300年後のエネルギー事情を考える
2022.03.22 <PASH! PLUS>
PASH! PLUS
1979年に『機動戦士ガンダム』が放送されてから『ガンダム』シリーズはさまざまな作品が制作されました。その中で唯一、我々のいる時代から地続きの西暦を舞台にしていたのが2007年放送の『機動戦士ガンダム00』です。
『ガンダム00』の舞台となる西暦2307は今から約300年後。時代的な距離感で言うなら、暴れん坊将軍で知られる徳川吉宗や大岡裁きで有名な大岡越前守がいた江戸時代中期から現代までくらいの開きですね。はるか未来のような、意外と近いような……。
そんな『ガンダム00』の世界において印象的な物のひとつが、軌道エレベーター(宇宙エレベーター)です。作中の三大勢力“ユニオン”、“AEU”、“人類革新連盟(人革連)”それぞれが管理する“タワー”、“ラ・トゥール(アフリカタワー)”、“天柱”の三機が登場します。軌道エレベーターは地球と宇宙空間とを結ぶ移動手段というだけでなく、宇宙に展開された太陽光発電用の人工衛星群からのエネルギーを地球に届けるという役割も担っていました。
近ごろ、SDGs(持続可能な開発目標)として、太陽光、風力、バイオマスなどをはじめとした再生可能エネルギーに世界中が力を入れています。その面でいえば、太陽光発電によるエネルギーで人々が生活している『ガンダム00』の世界は、究極のSDGsが実践されているといってよいでしょう。
では、太陽光発電によってどれくらいのエネルギーが作られているのでしょうか? 実際に調べてみました。
軌道エレベーター“天柱”に不随する発電衛星の発電量はどれくらい?
『ガンダム00』ファーストシーズン5話では、人革連の軌道エレベーター“天柱”のリニアトレイン内で沙慈・クロスロードが見ていた映像で、発電衛星の1日の電力供給量が1.2EJ(エクサジュール)だと説明されていました。
E(エクサ)は大きさの単位で、K(キロ)、M(メガ)、G(ギガ)、T(テラ)、Eの順に1,000倍ずつ大きくなっていきます。つまり、1.2EJ=1,200,000,000,000,000,000J!
100W(ワット)の電球を1秒間光らせるのに必要なエネルギーが100J(ジュール)なので、100Wの電球を380,517,504年間光らせることができるエネルギー量になります(計算は下記の通り)。
※1,200,000,000,000,000,000J÷100J÷60(秒)÷60(分)÷24(時間)÷365(日)=380,517,504(年)。
恐竜が生まれるよりも前の時代に灯した電球が今なお光り続けるくらいのエネルギー量。と言ってもピンときませんね……。ということで別の単位に変換してみましょう。
1.2EJ(エクサジュール)を一般的な電力単位に変換してみた
1.2EJ(エクサジュール)を、電気料金の計算などに使用する一般的な電力単位“KWh(キロワットアワー)”に変換します。“3600J=1Wh”なので、計算すると下記の通り約3,333億KWh!
1,200,000,000,000,000,000J÷3,600÷1000=333,333,333,333KWh
大きすぎてよくわからない数字ですが、このまま計算を続行! 1年の日数である365をかけて年間の電力供給量を求めると、およそ122兆KWhとこれまた大きすぎてよくわからない……!
333,333,333,333KWh×365(日)=121,666,666,666,545KWh=122000TWh
ちなみに、現実における世界の電力消費量は約25,000TWh(テラワットアワー)ほどなので、人革連の発電衛星は現在の全世界における消費電力の5倍近くを供給できることになります。
ユニオン、AEUも同じくらいの規模の発電衛星を所持していると仮定すると、合計発電量は現在の全世界における消費電力の約15倍。西暦世界驚異のメカニズム……!
122,000÷25,000=4.88
果たして未来のSDGsは完璧なのか?
“天柱”の電力供給量がどれほどすごいかということは理解できましたが、これはあくまで“電力”に絞った場合の話。一次エネルギー消費量に当てはめるとどうなるのでしょう?
調べてみたところ、2020年の世界における一次エネルギー消費量は556.6EJ。そして、“天柱”が1年稼働した際の総電力供給量は438EJです。流石に全世界のエネルギーを賄うには現代の時点でも力不足というところ。
しかし、前述の通り『ガンダム00』の世界には軌道エレベーターがあとふたつあります。“天柱”と同様の規模であると仮定すると、総電力供給量は438EJ×3=1,314EJとなり、2020年の世界における一次エネルギー消費量の約2倍! SDGsが叫ばれる世の中、『ガンダム00』のような宇宙での太陽光発電の実現が望まれますね!
ちなみに、現代技術で太陽光発電により122,000TWh(=122,000,000,000,000KWh)を確保する場合、環境にもよりますが100㎡の太陽光パネルで年間10,000KWhを発電可能なので、必要となる太陽光パネルの枚数は122億枚です。
これは面積にして122万?と日本の面積である約38万?の3倍強! 設備が宇宙にあるわけですからスペースの確保は容易かもしれませんが、まさしく驚異のメカニズム……!
日本3つ分くらいの土地が丸々すべて太陽光発電パネルで覆いつくされるわけですから、環境に深刻なダメージがありそうです。SDGsにはほど遠い計画になってしまいそうですね。
これからの300年、『ガンダム00』のように軌道エレベーターが作られるのか、もっと画期的なエネルギー生産が始まるのかはわかりませんが、エネルギー問題が解決していきSDGsが実現できると良いですね。そして、ソレスタルビーイングが必要ない世界になっていて欲しいものです。
まあ、『ガンダム00』の世界では、アザディスタン王国のように皮肉にもSDGsの実現によって困窮する国家が発生している他、“太陽光発電紛争”という、文字通り太陽光発電システム建設を発端とした紛争が起きてしまうなど、必ずしもSDGsが平和をもたらすわけではないということも描写されていたわけですが……。
そう思うと、『ガンダム00』 のシリーズ作品を見返して300年後の未来に深く思いを馳せることで、よりよい未来を築くことができるのかもしれません。ちなみに、物語はシーズンごとに一応完結する形ですが、全体を通してみるとより楽しめるのでオススメです!
また、新型コロナ対策のため延期となっていた舞台版のセカンドシーズンの公演が本年2月に実現しました。7月27日にはBlu-ray&DVDが発売されるようなので、そちらもチェックしておきたいですね!
参考文献及び資料
『機動戦士ガンダム00』公式サイト
電気事業連合会 公式サイト
エコでんち 公式サイト
Enterdata“世界のエネルギー・気候統計”
日本エネルギー管理センター 公式サイト
Wikipedia:『機動戦士ガンダム00』、国の面積リスト、持続可能な開発目標、軌道エレベーター、宇宙太陽光発電
世界のエネルギー消費と資源 - 電力事情について | 電気事業連合会
※画像は公式サイトをキャプチャーしたもの。
(C)創通・サンライズ
文・渡辺晴陽
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