interview

EXILE/FANTASTICS世界さん×ToyotakaさんSP対談!『ヒプステ』『進撃ミュ』の裏話も!

2024.11.02 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

 アニメ、漫画、ゲームなどのカルチャーに精通するEXILE/FANTASTICSの世界さんが、ご自身の「好き」を突き詰める『少年セカイのススメエンタメ道』がPASH!にて好評連載中。今回は特別に、2024年1月号に掲載された記事を抜粋してお届けします!

ゲストは、世界さんの親友でありプロダンサーのToyotakaさん! ご自身も出演されていた『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stage(以下『ヒプステ』)・「進撃の巨人」-the Musical-(以下『進撃ミュ』)の裏話などをたっぷりお話しいただきました。

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アニメや漫画とヒップホップは親和性が高いカルチャー

世界(以下、世) Toyotakaの存在を認識したのは10年以上前で、僕がダンスバトルに出ている頃から彼も出ていたんですよ。JAPAN DANCE DELIGHTという世界でも大きなダンス大会で優勝した実力者で、海外でワークショップを行った経験もあります。
Toyotaka(以下、T) Beat Buddy Boiというチームで優勝しました。
 そうそう、Beat Buddy Boiのダンスを見て、ベースはヒップホップだけどいろいろなジャンルが入っていて、日本では珍しいタイプだなと思ってた。
T 僕から見た世界はまさに異端児。ショーや大会に出ても毎回パートナーが違うから、一匹狼みたいな。とにかくダンスが上手くて、当時オールドストリートヒップホップが流行っている時代だったので、世界のスタイルはすごく目を惹いたんです。そして、ちょうど彼がEXILEのオーディションを受けるタイミングだったので、激励を兼ねて声をかけました。そのときの「EXILEになったら焼肉おごります!」という約束はいまだに果たされていません(笑)。
 まったく記憶にない。
T 都合が悪いことだけ記憶を消そうとするんですよ(笑)。
 まあ、出会いはそんな感じで、EXILEに入ったあと、すごいやつだけ集めたチームを作りたいなと思ったときに声をかけてから、考え方が似ていたこともあって急激に仲良くなりました。アンダーグラウンドのショーに出るときはだいたい一緒だったけど、気が付いたらほかでも接点が増えていて。直接同じ作品に出ているわけではないけれど、近いところにToyotakaがいるようになっていました。なので今回は! 『ヒプステ』シリーズなど2.5次元作品にもいろいろ出演して、ダンサーとして活躍の場を広げている彼にいろいろ聞いてみようかと!
 おお、切り込むね。
 読者のみなさんもダンサー目線の話は気になるんじゃないかな。初めての2.5次元の舞台に立ったのは?
 僕個人の名前がクレジットされたのは『ヒプステ』ですね。2017年にBeat Buddy Boiで出演した舞台『TOKYO TRIBE』で、『ヒプステ』の演出を務めている植木 豪さんと共演したのがきっかけでした。『ヒプノシスマイク』(以下『ヒプマイ』)を豪さんから布教されて。アニメや漫画などのポップカルチャーって日本が世界にアピールできるとても素敵なものじゃないですか。それとヒップホップをかけあわせてこんなに面白いことができるって、それぞれのカルチャーに愛がないとできないと思うんです。それを今度は2.5次元として表現するのはすごく挑戦的だと思ったのですが、豪さんからオファーをいただいて「僕が信頼しているメンバーを集めるので一緒にやりましょう」と返事をしました。

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 Toyotakaはずっとアングラでダンスをやってきたじゃん。2.5次元舞台は勝手が違ったりするものなの? アングラなステージって僕たち自身が主体というか素材そのままで勝負するけど、舞台は衣裳を着て演出がついていろいろ整えられているじゃない。
 やりたい世界観を魅せるという意味では似ている部分もあるけど、物語がつくとやっぱり違いましたね。でも正直いちばんは、“誰かのサポート”で踊ることだったかも。Beat Buddy Boiで活動しているときは、サポートダンサーはやってこなかったから、メインキャストが作り上げる世界をブーストする役割を担っていろいろ意識が変わった。『ヒプステ』でいえば、神宮寺(寂雷)だったら「抜け感出しつつ、シルエットは綺麗にしよう」とか、(山田)一郎は「ブレイクダンスやいわゆる『ザ・ヒップホップ・ストリート』みたいな感じに」とか、すごくワクワクしたのを覚えてる。『ヒプマイ』ではアニメのキャラクターモーションのアクターもやらせてもらっているけど、僕らがキャラクターらしい動きを提案して作っていったので、それも含めて新鮮だった。
 昨今、アニメキャラが踊ることは当たり前になったけど、アニメのキャラとしてのダンスってちょっと違うよね。ダンスってその人の癖がいちばんの武器みたいなところがあるから、役として踊るとなるとそこを封印せざるを得ない。バランスが難しいけど、それによって新しい武器ができたり。
 そうそう。(碧棺)左馬刻みたいなオラついているやつがシャカリキに踊るわけにもいかないから、じゃあどうしたら彼らしくなるか、というところから新しいものが生まれるしね。
 僕も『ヒプステ』は観させていただいているけど、役者さんたちがガンガン歌うし踊るじゃない。ほかの作品は踊りがメインというよりかは、表現手法のひとつとしてダンスと歌があるけど、『ヒプステ』はそれが主軸だから大変そうだよ。
T 『ヒプステ』はとくに、豪さんが何事にも全力な人だから、カンパニー全員がそうなっているかも。物語のなかで彼らは命を燃やしながら戦っているので、そういう姿に心が動かされるんですよね。
 『ヒプステ』のダンスはToyotaka担当?
T Beat Buddy Boiメインにみんなで作ってるよ。そのなかでもメンバーによって得意なジャンルとかがあるから、ディビジョンや曲のイメージに合わせて中心メンバーが変わります。 アサクサ・ディビジョン“鬼瓦ボンバーズ”は?
T アサクサも僕らが作ってるよ。世界の推しでしょ。
 そう、いちばん耳に残る。
T 昔を思い出すよね。楽曲も今流行っているヒップホップというよりかは、日本で発展してきたラップやアニソンカルチャーを全部合わせて作っていたりするので、そこも特殊かも。
 確かにね。普通のダンスショーケースだったら暗い曲もあるけど、舞台って基本的に明るい曲ベースだからそこは違うところかも。
T だけどそれがだんだん楽しくなってきて。逆に『進撃ミュ』は作品の世界観的に、ダンスも特殊っぽい感じが多かったかな。そのときも豪さんと一緒だったけど、すごく話し合いました。例えば調査兵団にはジャネット・ジャクソンのリズムはどうか、兵隊っぽいダンスならどうか、みたいな。結局、1演目の構成を作るのに3日間かかりましたね。
 踊る人の経験値もさまざまだしね。ひと言でダンスといっても、コンテンポラリーやバレエもあるし。
T 冒頭の奇行種が出てくるシーンはまさに、色んなジャンルのダンサーが奇行なダンスをしていたよ。このシーンはNORIさんの振り付けなんだけど、経験も特技も違う出演者全員をどうやって同じところまで仕上げるかを考えて作っていてすごいなと思った。
 僕はバックダンサーをたくさん経験してきたんです。そのうえで、正直バックダンサーってお飾りなんですよね。絶対的な花形がいるから。でも舞台はダンサーがいないと成立しないでしょ。だからこそ表現や各ダンサーの活かし方とかすごく勉強になります。
T アングラでは、お芝居しながら踊ることはないからね。
 曲の雰囲気や世界観に本当にあっているかどうか分からないまま、表情を作っていることも多い。それが悪いとかではなくて、舞台になると演出家がいて脚本家がいて、すごくいい足し引き算をしてくれるんです。バックダンサーだけやっていると分からないことだよね。
T 世界は子役をやっていたから芝居にも触れてきたと思うけど、僕は『進撃ミュ』で初めて歌いながら踊る経験をしたんですよ。そこで舞台作品でのダンス表現はまだまだ突き詰められるなと感じました。ショーケースでは自分たちの好きな楽曲を使って、ダンスでデザインする感覚に近いけど、舞台は本当にデザインの幅が広くて。考えることはたくさんあるけど楽しいです。
 稽古やリハでも役者さんとダンスの話をすることはあるの?
 (入間)銃兎役の水江(建太)くんとかはウォーミングアップ中にステップの綺麗な魅せ方とかを聞いてきてくれましたね。『ヒプステ』でダンスに触れた役者さんたちが少しずつ上手くなっていく姿を見て、僕たちが参加したことで舞台にいい影響が与えられていたら嬉しいなと感じました。
 だんだん役者さんに求められるレベルが高くなっていくけど、役者さんが踊る機会は今後もっと増えそうですね。『ヒプステ』は役者とダンサーという今までありそうでなかった縁を繋いでくれた気がします。
 別作品でも僕らが認知しているストリートダンサーが活躍していて、役者とダンサーの融合はこれから先も楽しみしかないです。ダンサーって決まっている振りを踊る人だと思っている方も多いですが、僕らはダンスバトルとか即興で踊る世界にいたので、その場で音楽を聴いて踊ることに価値を見出してきました。だから、2.5次元舞台に携わるときは、必ず自由なパートを入れるようにしています。役者さんたちが演じる生の舞台に、ダンスでも即興というエッセンスを取り入れるのは、僕がアンダーグラウンドと交わってきたからできることだと思うので。
 今までダンスとは無縁だった方々が2.5次元舞台を通して、ダンスのこと、ダンサーのことを知ってくれたら嬉しいですね。
 うん、いろいろな形で知ってもらえたら嬉しい。ダンスってヒップホップカルチャーを構成する四大要素※のひとつなんです。綺麗な部分だけを切り取るのではなく、ヒップホップカルチャーとしてリスペクトを持ったままコンテンツと合体させて世に出していく方法については、いつも悩んでいますね。僕が初音ミクと一緒にやっている『MIKU BREAK』というプロジェクトでは、DJやグラフィティも取り入れているんです。ポップカルチャーが好きで観てくださった方に「こういう世界もあるんだよ、一緒にやってみようよ」と提案したい気持ちがあって。
 そういうカルチャーミックス的な視点でいうと、ゴリゴリのヒップホッパーが踊るようなダンスを、日本のアニメキャラが踊っていることも多くて面白いなと思っています。海外の有名なダンサーが『ドラゴンボール』や『ナルト』からムーブを作ったりもしていて、アニメとダンス、とくにヒップホップは実は親和性が高いんです。お互いに理解を深めていけばもっとできることが広がっていく気がします。
 そのバランスが難しいんだよね。「知ってほしいんです!」というのを前に出しすぎると、逆に触れづらくなってしまうと思うので。ただ、僕らがそうやって日本のポップカルチャーとやっている面白い取り組みを、これからの子たちがもっと切り拓いていってくれたら嬉しいですね。そのために、新しい道を作っておきたいなと思います。世界はEXILEとFANTASTICSでね。
 そうだね、エンタメの仕事をしている人は、魂があると思うので。
T 指先までの細かい動きまではまだ無理ですけど、若干のタイムラグはありつつもほぼリアルタイムでモーションキャプチャーできるところまで時代はきている。そういう、バーチャルとリアルが混ざっている世界ができたらなあと思っています。
 ダンサーはそういう分野でもっと仕事ができると思う。実在する人と、3DCGで動くキャラクターでは振りも変わるので、もっと細分化された振付師が出てくるんじゃないかな。
 まさに、『ヒプマイ』のキャラクターモーションをやっていて、「Toyotakaさんがやっているのは特殊技能ですね」と言われることが多いよ。芝居として成立しているだけでなくキャラクターらしさが出せないとダメなので。芝居もダンスもできる人がこれから増えるんだろうなと思います。エンタメのお仕事として踊るダンスと、僕らがクラブで培ってきたダンスは魅せ方が全然違う。そこのスイッチの切り替え方や塩梅を調整するところは、みんな悩むところだよね。
 仕事もしないといけないし。ダンスも魅せなきゃいけない。
 毎公演、反省してブラッシュアップをしていきたいですね。革命を起こせるのは常にチャレンジしている人だと思うので。
 そういう人は稀有なんだけどね。
 そんなふうに心を燃やしていたいし、そういうやつを見つけたいですね。

(※PASH!2024年1月号より一部抜粋)

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