interview
朴 璐美プロデュースの舞台製作チーム“LAL STORY”が贈る『死と乙女』。朴 璐美&山路和弘にインタビューを実施
2018.07.08 <PASH! PLUS>
PASH! PLUS
声優をやっているからこそ? 舞台での表情にも注目を
声優・舞台女優として活躍する朴 璐美さんがプロデューサーとなり立ち上げた舞台製作チーム“LAL STORY”。そのストレイトプレイ公演第1弾となる『死と乙女』が7月26日より新宿・サンモールスタジオにて開幕します。
PASH!PLUSでは、舞台の造り手としての朴さんの魅力に迫るべく、インタビューを敢行。朴さんが役者として惚れ込み、出演を熱望したという声優・俳優の山路和弘さんとの2ショットインタビューをお届けします。作品についてはもちろん、お互いへの想いや声優を目指す若者へのメッセージなど、たっぷりと語っていただきました!
舞台『死と乙女』ストーリー
独裁政権が崩壊後の某国。ポリーナ(朴 璐美)は、かつて学生運動に加わり、治安警察により誘拐・監禁され、その時の事がトラウマとなり過去から脱却出来ずにいる。新政府よりキャリアを約束されようとしているポリーナの夫・ジェラルド(石橋徹郎)でさえ、その傷を癒すことが出来ない。
ある夜、車がパンクし立ち往生していたジェラルドは、通りがかりの一人の医師・ロベルト(山路和弘)に助けられ、彼を家に招きいれる。ポリーナはロベルトの声に戦慄した。その声こそ、かつて自身を何度も拷問・恥辱した男の声だと…ポリーナの復讐心が燃え上がる。
忌まわしい過去を自ら裁こうとするポリーナ、自身ではないと身の潔白を主張するロベルト、妻の思い込みだと暴走を諌めようとするジェラルド。銃口を向ける妻は正気なのか。過去を明かす医師の言葉は本当なのか。食い違う3人の主張。何が真実で、何が嘘なのか。駆け引きの果てに見えるそれぞれの正義とは。
シューベルトの弦楽四重奏曲『死と乙女』の調べに乗せ、過去との闘いが始まる。
身構える必要は一切なし!変化する芝居を何回でも観に来て!
——今回の演目に『死と乙女』を選んだ理由をお聞かせください?
朴:“演劇集団円”にいたとき、演出の東さんと一緒に進めていた作品で上演の最終候補にまでなっていたのが『死と乙女』だったんです。制作的な事情があって立ち消えてしまったんですが、絶対いつかはやりたいと思っていた作品でした。
その当時、上演作品を探すにあたって翻訳物を読み漁っていたんですが、“3人だけの芝居”ということと、コアなテーマ性にグッと惹かれたんです。今回はとても小さい劇場での上演ですが、これには、額縁に囲われた劇場ではなく、体感型で見て欲しいという狙いがあります。お客さんに第一目撃者になっていただき、かつ演じている気持ちにもなって欲しいんです。自分の五感で感じられるのが舞台だし、お客さんをどんどん巻き込んでいきたいと!
——山路さんは、朴さんから出演のオファーを受けていかがでしたか?
山路:困ったなぁ~!と思いましたよ(笑)。暗い話だな~って。どうしようかと思ったんですが、台本を読んでみて深さを感じましたし、3人でやるような芝居も嫌いじゃないんで。劇場が狭ければ狭いほど、息をしただけでその演技が嘘かどうかバレちゃうんですが、僕はその辺の強迫観念にとらわれる状況も好きなので(笑)。それに、朴が言うし「やるか!」という感じですよね。
朴:ありがとうございます! 山路さんは毎日芸術賞を取られたばかりですし……そんな方の演技を間近で観られるってことは、なかなかないですよ!?
山路:嘘つけ! そんなこと思ってないだろー!
朴:山路さんが大好きなんですよー!
山路:わかった、わかった(笑)。
朴:それにね、もうすぐ放送が始まる『進撃の巨人』でも一緒ですしね。
山路:そうそう! 今、共演してるんだよね。
朴:ちょうどアニメのスタート時期と舞台の上演時期がかぶっていますから。『進撃の巨人』ファンの方もぜひ観に来てほしいです!
———稽古の様子はいかがですか?
山路:台詞量が膨大で……覚えられるかな、これって。朴も大変だよね?
朴:ぜひぜひ(カンペを)衣装のいたるところにつけていただきたいくらいですね…。
山路:(笑)。僕は台詞を覚えるとき、自分で相手役の台詞を読んで録音して、それを聞きながら自分の台詞を言ってるんだけど、全然入らない。
朴:そういうやり方があるんですね! 良いこと聞きました!
山路:稽古場の雰囲気は楽な感じですけど、朴のバイタリティには圧倒されています。本当に迫力のある女優だから。普段は皆でヘラヘラ喋ってるのに、稽古が始まってホン読み中チラッと見ると、完璧にこっちを睨んでるからね。そういう目を見ると「うわー本番でこれ見なきゃいけないんだー」って背筋が凍りますね。怖いんだもん(笑)。
朴:いえいえ、山路さんの方がものすごく怖いじゃないですか! 本当に私、ロベルトの役は山路さん以外考えられなかったんですけど、やっぱり山路さんには狂気がある!!
山路:えー、俺の役は脅されてばっかりじゃない。君の役の方がよっぽど狂気だよ~。
——海外の作家による心理サスペンスで、壮絶な復讐劇でもある本作。観劇初心者には少々ハードルが高い演目かもしれませんが、見どころはありますか?
朴:ともかく私は、山路さんの口に、パンツを突っ込みます!
山路:え!? それを観に来いって(笑)!?
朴:演出家の東 憲司さんもそのシーンがたぶんきっとお気に入りだと思うんですけど、稽古中、その“ト書き”だけは必ず読んでくれるんです(笑)。今、そのパンツをどんな素材にしようかって話もしていますし(笑)。
まぁそれはさておき、このお芝居、観ていただければ、ヒリヒリした思いができるんじゃないかと思います。大きい舞台ももちろん素敵ですけど、小さな空間で目の前で行われるものを目撃してしまう感覚で観られるって、レアなことではないかと思うので……。
山路:僕の周りのお客さん達に『死と乙女』をやると言ったら、反響がものすごかったんですよ。こういうストレスがたまりそうな芝居を観たい人達って、意外と居るんだな~と思いましたね。
朴:そういう方達のためにも、山路さんをいたぶりたいと思ってますよ!
山路:わかりました! 思う存分、いたぶってちょうだい!
——(笑)。では、観劇する上での心構えや秘訣を伝授して下さい!
山路:舞台を観るのに、準備は必要ない! 飛び込んできてくれるのが一番良いと思います。芝居って、期待しないで観た方が面白かったりするから。身構えないでと、お願いしたいくらいですね。
朴:この作品をアピールするときにネガティブな言葉ばかり使ってしまいますけど、今まで観たことのないものがそこにあると思うので、まずは「いらっしゃい」と。 そして、見終わった後には振り返って、時代背景について調べたり、戯曲を探してみたりすると良いかと思います。もしくは、もう1回観に来るとか。もう2回観に来るとか……?
山路:すごい営業だな(笑)。
朴:バレちゃいました(笑)? でも、舞台って初日から千秋楽まで変化していくものだし、この作品は特に変わっていくんじゃないかと。だから、何回観に来ても面白いと思います。山路さんのロベルトはどんな方向にも持っていけるという意味で、本当に難しい役。もしかしたら日替わりになるかもしれないし……。
山路:そんなことできないよ(笑)!
朴:(山路さんをじっと見つめる)
山路:なんとかするよ(笑)。あと、やっぱり「生を楽しんでもらう」ってことが大きいかな。生のときの声の圧と、その空気ってマイクを通してのものとは違うので。
朴:LIVE! 身体が鳴る音まで感じられるのってこういう空間でしかないと思う!
山路:確かに、お客さんの空気感が生の醍醐味だね。舞台って、結構お客さんの反応で完成するところがあるし、お客さんに教えてもらえることも多くありますから。
朴:かっこいい……え、ずるい! 本当にかっこいい(笑)!
——ちなみに、声優と舞台では演じ方にどのような差がありますか?
山路:声優って声で全部やらなきゃいけないから、もし舞台でそれをやってしまうと鬱陶しくなっちゃいますよね。なので、動きと声を分散させてバランスを重視します。これは、声優をやっているからこそ余計に気になるのかもしれませんね。やり方の違いというか、バランスの問題ですかね。
朴:舞台は相手役の目から色々貰えたりするけれど、声の仕事だと相手の目を見ることはできないので、より使わなきゃいけないところがあると思います。ただ、根本は一緒かと!
——舞台では、お二人の表情が見えるというのも大きなポイントですね。
山路:ちょっと大きな劇場になると、“表情を魅せる”ってこともしますけど、今回のような劇場では、表情をあえて少なくするのが良いのかもと思っています。まぁ、そこまできるか……というも課題はありますが。でも、これだけ中身が詰まっている芝居なので、表情を作っている余裕がなくなるのも面白いかなと。そうするとお客さんも生を実感するんじゃないかな!?
朴:山路さん、役者!! 役者ですね!
山路:自分が?
朴:私は違います! 私はね、お芝居が好きな夢見る演劇少女!
山路:嘘つけ! 何だそれ(笑)!!
——演者として強い想いを抱いているお二人から、声優・俳優を目指す若者にアドバイスをいただけますか?
朴:学生の方たちでしたら、まず「お勉強しなさい」と言いたいです。もちろん点数を取るための勉強ではなく、例えば、歴史を知っておいて損はないし、生物、化学……何をとっても無駄になることはないから。そして、ちょっぴり悪いこともやってみて欲しい。夜中の2時に玄関から1歩外へ出てみて、夜中の空気を感じてみるだけでもいいし。何事も経験してみるのが大事だと思います。
山路:僕自身、未だに、やれることは全部やりたいなぁと思っていて。これからどこへ向かうかとかではなく、この仕事に関しては“生涯イチ素材”であると思っているので、自分の色になるんだったらどんな色でも見てみたいなぁと。だから若い皆さんにも、やれることは全部やりたいという欲を持ってもらいたいかな。
——知識と経験を積もうってことですね。それでは最後に、読者へのメッセージと公演への意気込みをお願いします。
朴:『死と乙女』のようなコアな作品を観ると、自分の新たな扉が開くような感覚が得られるんじゃないかと思います。観てすぐに意味はわからなくても、自分の中に強烈な印象が残って、もっと大人になってから「こういうことだったんだ」って感じられるような。そんな作品にしたいと思っていますし、そんな作品になると思います! 本当に老若男女たくさんの方に観に来ていただきたいです! 私にとっては、舞台も、声の仕事もなくてはならないものですが、“舞台を作る”ことが大好きなので、これからも作り続けて行きたいし、いろんなジャンルのことをやっていきたいと思っています!
山路:とにかく、ニュートラルな状態で何も考えないで来て、何かしら受け取って帰ってくれれば良いかと思います! 今の若い子達は、好みや思考がバラバラという印象があるので、案外この作品にグッとくる子は多いと思う。もちろん、そういうアンテナを張らせるような芝居でもあるし、今出会うべき芝居として刺激的なんじゃないかと。ぜひ観ていただけると嬉しいです!
朴:“大人の魅力”を感じにいらっしゃい……!!
和気藹々とした雰囲気の中、爽やかにインタビューに答えてくれた朴さんと山路さん。そんなおふたりですが、ひとたび『死と乙女』という作品の渦に巻き込まれれば、思わず目を伏せたくなるような狂気の人となる……。まさに、命を削り、産み出す芝居。そんな奇跡の瞬間を見逃すなんて出来るはずありません! 舞台は7月26日から開幕。皆さんもぜひ、劇場に足を運んでみて下さい!
DATA
■舞台『死と乙女』
公式サイト:http://www.shi-to-otome.com/
公演期間:2018年7月26日(木)~8月5日(日)
会場:サンモールスタジオ
チケット料金(税込・全席指定)
前売り券=4,800円
プレビュー割=3,800円 ※7月26日(木)、7月27日(金)のみ
当日券=5,300円
U-20割=3,800円(20歳以下/年齢確認有り)
STAFF:
作=アリエル・ドーフマン
翻訳=芦沢みどり
演出=東 憲司(劇団桟敷童子)
CAST:
石橋徹郎/朴璐美/山路和弘
インタビュー・文:柳原真咲
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