アニメ『鬼滅の刃』堕姫以上の手練れがいたかも？ 遊郭編に潜む一番ヤバい鬼の話（金銭的な意味で）

　アニメ『鬼滅の刃』は、2月13日に最終回を迎えた遊郭編も高い人気を誇りました。筆者も毎週欠かさず放映をチェックし、漫画原作を踏襲しつつもパワーアップしたド派手な闘いに心が燃えました！

　遊郭編の舞台は音柱・宇髄天元さんにぴったりなド派手な街、吉原です。吉原遊郭といえば江戸時代より続いた花街で、300年以上も続いた歴史があります。最盛期には敷地面積は2万坪あまり、数千人の遊女がいたとされています。

　また、吉原は江戸市中でも最大級の繁華街で、一日に千両落ちる場所ともいわれていたそうです。1両の貨幣価値は江戸時代でも幅がありますが、江戸初期であれば現在の10万円前後とのことですので、なんと1億円！

　今の日本の人口は約1億2千万人ですが、享保6年（1721年）における日本人口は約2,600万人で、当時は鎖国中であることを考慮すると凄まじい経済活動です。その他、吉原遊廓は新しい文化の発信地でもあり、さまざまな女性の髷や衣装が吉原遊廓から新しいファッションとして広まりました。

　劇中でもその華やかな街に圧倒されるかまぼこ隊。禰豆子は定位置ですが、炭治郎は呆気に取られ、伊之助はおののき、善逸はお約束通りにキレイなお姉様方に心奪われます……。

　そんな華やかな吉原の様子を見ていると、筆者も“花魁（おいらん）とお近づきになりたい！”と思ってしまうので、善逸の気持ちは理解できないこともないですね（笑）。

　実際のところ、花魁とお近づきになるためには一体いくら必要になるのでしょうか。調べてみました。

花魁とお近づきになるにはどれぐらいの金額が必要なのか？

　まずは、“花魁”という存在について簡単に解説します。吉原遊廓の遊女（遊廓や宿場で男性にサービスを行う女性のこと）にはランクがあり、美貌と機知を兼ね備え、男性の人気を集めることができる女性であれば、遊女の中でも高いランクに上ることができます。花魁はそんな遊女のなかでも上級に位置する存在に対する敬称となります。

　では、本題となる花魁とお近づきになるための金額ですが、揚代（遊興費）に関していえば、遊女のランクの他、時代、店舗によってまちまちです。大正時代の揚代は一例として下記のとおり。

■時間遊び：4時間料金

■全夜遊び：18：00から翌朝8：00までの料金

※大正時代の貨幣価値は１円＝4,000円で換算

　如何でしょうか。“この程度？”と思われるでしょうが、これらはあくまでお店へ支払う表向きの金額。実際にはここからガンガン加算されていく形になります。その理由は、揚代が遊女の懐に1円も入らないため。

　遊女は衣食住以外の費用をすべて“ご祝儀”という形で稼がないといけないので、客はあの手この手でおねだりされることになります。花魁とお近づきになるには、下記の“しきたり”を最低でも3回はこなさないといけないとのこと。しかも花魁が客を気に入らなければ二度と会ってもらえないこともあるとか……。

・最初に引手茶屋（遊女と客を仲介し、酒宴の場を提供する店）へ行く
・遊女を指名して待つ
・遊女が花魁道中をしてお客を迎えにくる
・遊女の部屋に行く

　“しきたり”にかかる費用は諸説ありますが、江戸時代の最盛期における酒宴は料金や花魁へのご祝儀などを含めて一晩300万円～500万円もかかったとか。他の資料では100万円とも！

　100万円を3回繰り返しても300万円、そのうえ花魁が気に入らなければアウト。時代とともに揚代がディスカウントされていったとはいえ、大正時代でも一晩数万円ではすまなさそうです。

　天元さんは吉原について「昼は眠りに落ちて夜はこうやって光輝く……鬼にはうってつけの場所」と語っていましたが、それは堕姫（だき）や妓夫太郎（ぎゅうたろう）のことだけでなく、花魁のことも指していたのではないでしょうか。何しろ“鬼”のように金がかかるわけですから……。

参考文献及び資料

TVアニメ『鬼滅の刃 遊郭編』公式サイト
ウィキペディア：『鬼滅の刃』、吉原遊郭、花魁、江戸時代の日本の人口統計
『図説吉原事典』（朝日新聞出版：永井義男著）
UFG：昔の「1円」は今のいくら？1円から見る貨幣価値・今昔物語
日本銀行HP：江戸時代の「1両」の現在価値はどのくらいですか？教えて！にちぎん
日本文化の入り口マガジン 和樂web：一晩500万円？浮気はご法度！遊郭・吉原で高級遊女と遊ぶルールが厳しい！

※画像は公式サイトをキャプチャーしたもの。
(C)吾峠呼世晴／集英社・アニプレックス・ufotable

文・内海 健（よしもとライターズアカデミーウエスト）

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