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『ユーリ!!! on ICE』音楽制作チームが徹底楽曲解説!【前半戦】
2016.12.22 <PASH! PLUS>
PASH! PLUS
勇利、ヴィクトル、ユリオたちのSP&FSを濃密紹介♪
◆ユーリ・プリセツキーFS
『ピアノ協奏曲 ロ短調 アレグロ・アパッショナート』(3:47)
松司馬 拓指揮 Ensemble FOVE(Piano:實川 風)
*録音は、松司馬くんの指揮、實川 風さんの流麗なピアノ演奏、そしてEnsemble FOVEのストリングス、金管、木管、打楽器のみなさんによる、鬼気迫るものを感じさせる素晴らしい演奏でした。松司馬くんの書いた高難度のスコアを、飄々と演奏するFOVEのみなさん、とにかくめちゃくちゃ技術水準が高い。個人的には、ここまでクラシカルなハーモニーのサウンドを生録音するのは初めてのことでした。しかも書き下ろしの新曲…普通ないです、こんなの。音楽編集作業でユリオのFSのスケートシーン(9話、12話)に曲をあてたときは、鳥肌が立ちっぱなしでした。
◆南 健次郎FS
『Minami’s Boogie』(3:32)
梅林太郎
*作曲とエレキギターの演奏は、梅林くん本人によるものです。ブラスアレンジは日本を代表するトロンボーン奏者、そして「ソリッド・ブラス」で名を馳せる、村田陽一さんによるものです。エンターテインメント感がたっぷりありつつも、切れ味抜群のブラスアレンジに仕上げていただきました。
*この曲の宮本賢二さんの振付動画が届いたときは、素晴らしく音楽とシンクロした大変ノリのよい振りが付いていて、エアギターのパートまであって嬉しかったです。
*勉強のために『クリスマスオンアイス』観戦したんですが、アイスショーを観るのは初めてで、チケットを購入するべく自分なりにけっこう頑張って、一次抽選、二次抽選と毎回早めにアクセスしトライしたんです。しかしまったく抽選には当たらず、チケットは即完売…。新参者の僕なんぞは全然とりつく島もなく、フィギュア人気のすさまじさにすっかり舌を巻いて諦めかけていました。すると山本監督が「知り合いのスケートファンの方からチケット手に入れられました」と譲ってくださって。そのときに、「ああ、山本さん、やっぱりすごいんだな…」と改めて思いました。
◆ピチット・チュラノンSP
『映画“王様とスケーター”より「Shall We Skate?」』(2:15)
松司馬 拓 featuring The Soulmatics
*メインボーカルとコーラスは、ゴスペル・グループのThe Soulmaticsに担当してもらいました。彼らはブロードウェイ、ディズニー、『glee』などのサウンドイメージに精通していて、勘どころが素晴らしく、メンバーのなかにはニューヨーク仕込みの実力者も多いため、とてもテンポよく録音が進みました。またガヤ録音の際には、王様、その周りの家臣、門番、町娘、酔っぱらい…など、現場でそれぞれ適当に配役を決めて、セッションしながら作っていくような録音で、とても楽しかったです。
*オケは生っぽく聴こえますが、そのほとんどがサンプリングと打ち込みで作られています。これは“サンプリングの魔術師”の異名を持つPlus-tech Squeeze Boxこと、ハヤシベトモノリさんのアレンジによるものです。彼はどんなサウンドでもだいたいプログラミングで作ってしまう天才で、特にディズニー、ミュージカル、カートゥーン系は、彼の最も得意とするところ。本楽曲ではその力を遺憾なく発揮していただきました。『ユーリ!!! on ICE』では、プログラム以外の劇伴音楽も、ハヤシベさんにアレンジで参加してもらっているものがいくつもあります。また別作品の話になりますが、渡辺信一郎監督の『スペース☆ダンディ』第17話に全編ミュージカル回がありまして、そのミュージカル曲はすべて梅林くんとハヤシベさんの共作によるものです。とても良くできていて面白い話なので、興味のある方がいたらぜひ観ていただきたいです。
◆ピチット・チュラノンFS
『映画“王様とスケーター2”より「Terra Incognita」』(3:41)
松司馬 拓 featuring U-zhaan
*使っている楽器は、BBフルート、バンスリ、タブラ、シタールなどの生演奏と、バグパイプ、エレキギターなどのほか、シンセ、打ち込みが混在していて、その上でコーラスはブルガリアン・コーラス風と、かなりハイブリッドで奔放かつ縦横無尽なハイブリッド・ワールドミュージックです。カオティックな世界に陥ることのないように丁寧にグルーヴをまとめていった結果、面白いバランスの仕上がりになって、個人的にとても気に入っています。「バンスリ」とはインドの楽器で、大きめの横笛で尺八にも少し似た音なんですが、これは『ユーリ!!! on ICE』の音楽全編にわたってフルートを担当してもらっている多久潤一朗さんの演奏によるものです。彼の演奏は、そこにふわーっと情景が広がるようなすごい表現力で、録音作業はいつも最高に楽しいです。(下の問いで記述している)菅野よう子さんと制作した『残響のテロル』の劇伴をはじめ、多久さんの演奏は諸作品でも常々フィーチャーさせてもらっています。「タブラ」はU-zhaan、「シタール」はヨシダダイキチさん、どちらも国内屈指の演奏家です。U-zhaanには劇伴曲(毎回予告で流れる曲など)にもいくつか参加してもらっていて、こちらでも大変高い技術の演奏をフィーチャーさせてもらっています。
Q.楽曲冒頭をはじめ、要所要所に入る歌詞は一体何語で、どんなことを歌っているのですか?
王様が統治する、とある中央アジアの国の古語…のようなイメージですが、実はこれ、まったく意味はありません。先にメロディーを作って、そのメロディーを理想的に響かせられる言葉をチョイスし、それを歌詞にしていくという、子音のあるヴォーカリーゼ【歌詞を伴わない母音のみの歌唱法】みたいな方法で作詞しています。これらの言葉はボーカル(神田智子さん)録音に際し、僕と松司馬くんで書き上げていきました。こうした技術は、作曲の菅野よう子さんとの仕事から僕は大きく影響を受けていると思います。呼吸感、強弱、ディレクション、音楽を伝えるための技術、プロデュース技術含め音楽制作全般において、彼女からは本当に多くのことを学ばせてもらっています。
◆ジ・グァンホンSP
『La Parfum de Fleurs』(2:05)
松司馬 拓指揮 Ensemble FOVE
*伊藤亜美さん(Ensemble FOVE)がバイオリンのソロを務めているのですが、これが普通の奏法ではなく、胡弓のような弓使いとヴィブラートを一緒に考えながら演奏しています。さらっと綺麗なクラシックに聞こえるかもしれませんが、実はとっても変な曲です。でも演奏も曲も艶があって素敵で、とても気に入ってます。(松司馬)
◆ジ・グァンホンFS
『映画“上海ブレイド”より「The Inferno」』(3:43)
松司馬 拓
*オケパートはEnsemble FOVEの演奏によるもので、ビートアレンジ、SE・MEまわりはビートアレンジャー、米田 望さんの仕事です。前半は8分の6拍子、カーチェイス以降は4拍子になっていて、とくに前半の8分の6拍子で疾走感を出すためのグルーヴ作りには苦労したのですが、米田さんのおかげでうまくいきました。“拉致監禁”のパートでの情感たっぷりな素晴らしいサックス演奏は、上野耕平さんによるものです。それから分かりづらいですが、拉致していく車のSEも入ってます(笑)。
*“チャイニーズマフィア”というオーダーだったので、『インファナル・アフェア』のポスターを見ながら(実は映画自体を観たことはないのですが)、こんなサントラだろうと妄想しつつ作りました。途中の上野さんによるサックスがエロくてワルいです。なんだかこのサウンドトラック制作、「もっとエロく!」ばっかり言っていた気がします。(松司馬)
>>『ユーリ!!! on ICE』楽曲解説前半戦はここまで! 後半戦もどうぞお楽しみに♪