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『宇宙戦艦ヤマト2202』第3章が本日上映開始。福井晴敏&小野大輔のインタビューをお届け
2017.10.14 <PASH! PLUS>
PASH! PLUS
アフレコ時のエピソードや第三章一番の見どころは?
10月14日より第3章の上映が開始された『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』。
第4章『天命篇』の公開日が2018年1月27日に決定し、ますます盛り上がる本作について、福井晴敏さんと小野大輔さんのオフィシャルインタビューをお届けする。
――第二章がヤマトのピンチで終わりましたが、第三章はどのような展開を見せるのでしょうか?
福井:第三章『純愛篇』の予告にもあったとおり、ヤマトの頭上にはガトランティス増援艦隊の大群が現れて、それを前にして波動砲を使うのか、決断が迫られます。古代にとって波動砲を撃つという行為は魂に対する裏切りになる。自分の魂、沖田さんの魂、そして地球の恩人であるスターシャに対してもそうです。
彼が何を納得して、あるいは納得できずに引き金を引くのかどうか……そこがまず最初の見どころになってくると思います。
小野:古代は幾度も選択を迫られていますが、第三章は特に「古代、選べ!」となっていて、そこはずっと辛かったですね。演者としても一個人としても、古代の気持ちになるとかわいそうで仕方がない。本当に福井さんは酷い人だと思います(笑)。
――アフレコ時のエピソードを教えてくださいますか?
小野:クラウス・キーマン役の神谷浩史さんは印象的でした。キーマンはひとことで言えば「暗躍しているんじゃない?」と思える人物です。ですから先のことをわかっていないと演じられない役柄だと思うんです。それで神谷さんが、福井さんに熱心に質問をしていたことが印象的でした。
アフレコブースを出てまで質問をしていました。それが、「俺は知りたいんだ」と行動するキーマンの役柄然としていたし、現場の士気を高めるファクターにもなっていました。
面白かったのは森雪役の桑島法子さんです。雪はストーリー上、少し出てこない期間がありますので、桑島さんもその間アフレコがお休みでした。だから、やっと出てきたテストの際に、「2カ月ぶりですね」みたいなアドリブを入れていて、雪っぽいなと(笑)。
これだけ登場しないと雪も拗ねるはずで、「ああ、やっぱり長い旅を続けてきただけあって、役のままに見える。そこが素敵ですごいなあ」と思えました。
福井:今回は平たい言葉で言えば「泣き」の芝居が古代には多い。泣きといってもめそめそすることではなくて、感情の発露で立っていられないという芝居です。アニメはやはり絵なので、長回しで一人の動作を追うことは避けて、どんどんカットを切り替えて話を動かしていくのですが、今の作画技術であればもっと踏み込めると感じていました。第七話や第九話には、そういうシーンがあります。
小野:第七話の古代が迷うシーンですが、迷いと不安が極限状態になって、沖田さんの魂にある意味すがるんです。古代がここまで自信をなくしてしまっていいのか? と思っていたら福井さんがアフレコに来てくださって、「迷っていいです。情けないくらいやっていいです」と言われたので、タガがはずれました。
古代って、こんなに泣くかなと思ったのですが、思い出してみれば『2199』の最後で、みっともないくらい泣いているんですよね。彼のメンタリティは、衝動が発露したときはなりふり構わない部分も持ち合わせているんですよ。
――第二章で登場人物が出そろった感があります。続く第三章では誰の動きに注目すればいいでしょう?
福井:古代は言うに及ばずですが、キーマンが「そもそもなんなの?」というのがわかってくると思います。
小野:キーマンはクールで俯瞰的に物事を見ている人なので、納得のいくセリフが多くありました。ヤマトの人達に向かって「古代にばかり責任を押しつけて」みたいなことを言うのですが、「この人ただの嫌なヤツじゃないんだ」って(笑)。古代の背中を押すような部分もあるし、ヤマトに寄り添って大事なものが見えている人なのかなと思いました。
福井:たとえば企業の問題点も、内部の人間よりも外からやってきた協力会社の人のほうがわかるわけです。ただ、わかっていても、言うか言わないか、という選択がある。キーマンは言ってしまいます。あの立場にいる人物としては迂闊なことなはずだけれども、彼は愛せる人だし人情家ですね。
キーマンともう一人、ズォーダーも注目です。ガトランティスがどのような敵なのかがわかってくる。圧倒的に強大な敵という存在ですが、何がどのように人類に脅威なのか? これが見えてきます。
人間ともガミラスともまったく違う存在が、“愛”を外側から見て嗤う、忌み嫌うのですが、逆に言えば、愛を外から見ている彼らだからこそ、愛について語れる部分があるわけです。
――第三章のサブタイトルである“純愛”の意味するところを教えてください。
福井:愛というのは、それこそ“愛は地球を救う”であって、輝かしい部分もあるのですが、反面こわいものも含んでいます。世界を見渡せばさまざまな事件が起きていますが、それも間違いなく愛のもとでやっているわけです。
でも「そういうことじゃない、愛する人のためだけで人間はいいのではないか?」と言っていたのが『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』だった。しかしその、愛する人のためということも、結局はエゴに転換してしまうのではないか? 第三章『純愛篇』は愛の輝かしい部分を描いていますが、今後は愛の暗い部分も出てくることになると思います。その両面を描くことが大事なのです。
先ほど言ったズォーダーはその問題点を非常によくわかっていて、今後もそういう描き方をしていきます。第三章はその所信表明みたいな回ですね。そういう意味では、実はちょっと皮肉なタイトルです。
小野:違う愛も描くからこその、この時点での「純愛篇」となると、僕=古代としては辛いなあと思いました(笑)。ただ、古代としての愛の表現や生き方は、僕は共感ができています。
人が好きとか、何かが好きというのは突き詰めていくと理屈ではないと思っていて、理由は後付け。それを俯瞰して問いかけてくる存在も必要だとは思うのですが、ただそれに対してはやっぱり、理屈抜きで「俺は好きなんだ」って、胸を張って言えるかなと思います。
福井:古代は、これまでのヤマトではある意味ヒーローだったのですが、『2202』の古代は人間です。その“人間・古代進”は、「決断」とまでも言えない……とっさの反射によって大きく背負ってしまうものもあります。「人間ってやっぱりこうしちゃうんだよ、とっさには」ということです。
逆に言えば、人間のそうしたところを、覚悟して受け止めたうえで何をするか、ということだと思うんですよね。そのあたりは深く描いています。ヤマトってもともとそういう人の深層にリーチしようとしていたアニメなんじゃないかと感じますしね。
小野:面白いですね。面白いけれども(古代は)辛いっていう(笑)。時代を映し出していますよね。福井さんがそのように描いているからというのが大きいと思いますが。
――最後に、第三章の一番の見どころをお願いします。
福井:今回の章は“芝居”ですね。役者さんの芝居をすごく粘って録っています。絵も、実は相当リテイクがあって、熱を入れて描き直しなどが行われています。もちろんヤマトらしいメカのアクションやスペクタクルもあるのですが「アニメーションってこれくらい突っ込めるんだ」というところの一端を見ていただけるといいなと思います。ストーリーとしても、方向が見えてきます。
第二章までの『2202』は『2199』の続きであり、『さらば』かもしれないし『2』かもしれないしという、言ってみれば三要素の中の複雑な経路をどうやって渡っていくのか? という答え合わせをしてきた部分がありました。第三章からは、それらがクリアできたのはわかったけれど、どこに向かうの? という部分が、初めてちょっと明らかになるのかなというところですね。
小野:福井さんに“芝居”とおっしゃっていただけましたし、僕もそこなんだなと実は思っていて、完成直前の映像を見てゾクゾクしたんです。生の感情がそこにある気がして。
『ヤマト』はSFアニメですが、やっぱり生きているなって思える映像でした。生々しいまでの生を感じていただきたい。そこにはやっぱりアニメーションを作るすべてのスタッフさん達の技術と、「好き」という“想い”が詰まっていますので、みなさんにも感じていただければと思います。
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