anime
『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』制作秘話や苦労話が飛び出したトークショーをレポート
2018.04.02 <PASH! PLUS>
PASH! PLUS
鈴木麻里 、菅野宏紀、神林 剛 、竹本順仁が登壇。TVシリーズとの制作における違いや見どころなどを語る!
映画『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)』のスタッフ陣によるトークイベントが、東放学園映画専門学校にて3月28日に開催された。
東放学園映画専門学校は、映像やアニメなどのクリエイターを目指す学生が通っている専門学校。今回のトークショーには、ボンズより鈴木麻里さん(プロデューサー)、竹本順仁さん(制作デスク)、神林 剛さん(撮影監督)、菅野宏紀さん(アニメーター/作画監督)が登壇し、映画『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)』の制作にまつわるエピソードを語った。
【登壇者(敬称略/画像左から)】
・鈴木麻里(プロデューサー)
・菅野宏紀(アニメーター/作画監督)
・神林 剛(撮影監督)
・竹本順仁(制作デスク)
映画制作秘話や苦労話など気になる話題が満載
4人それぞれから、自身がどういった仕事に携わっているのかという自己紹介からトークはスタート。まず初めのテーマは映画制作における苦労話について。
口火を切ったのは鈴木プロデューサー。本作が2018年春の公開に向けて2017年のGW明けぐらいから作画制作が始まったので、通常の劇場作品よりもかなり短いスケジュールでの進行になったと苦労を滲ませながら語ると、菅野さん、神林さん、竹本さんと顔を見合わせてその苦労を思い返していた。
作画担当の菅野さんは、当初五十嵐(卓哉)監督からハードなシーンはないかも、と聞いていたそう。ところが蓋を開けてみると、自身の担当パートは中原中也の激しいアクションシーンが中心となっており、まったく楽ではなかったと語った。
撮影監督の神林さんは、TVシリーズの約3倍~5倍にあたる1,200カットの処理だったが、比較的スムーズに進行していたおかげで、撮影処理の際にいわゆる“お祭り”状態にはならなかったと笑顔を滲ませた。今まで神林さんがかかわってきた作品の中では、一番いいスケジュールで進行したと感じているそう。
ちなみに本編中7割のシーンで立ち込めている“霧”については、五十嵐監督から全編CGでの処理を依頼された際にスケジュールと折り合いをつけ、どのように監督が思い描く処理を行うか模索したとのこと。
制作デスクの竹本さんは劇場作品に関わるのが初めてだったそうで、カット数に驚いたそう。上述したように、神林さん曰く撮影処理班的にはスムーズな進行だったと感じていたようだが、竹本さんと菅野さんは制作状況にぼやく場面が多かったと話していた。制作デスク的には、映画ということで各担当がクオリティにこだわり、TVシリーズ版なら上がってきそうなタイミングで素材があがってこないことにやきもきしたようだった。
続いてはTVシリーズとの制作の違いについて。鈴木さんは、TVシリーズは原作を“お預かりしている”という感覚だったが、今回は原作者(朝霧カフカさん)と一緒に作り上げていくという感覚だったと振り返る。また、大きなスクリーンではTVよりも見える部分が多いため細部までこだわったそうで、菅野さんも、TVシリーズ版よりも細かいキャラクターデザインになっていたと振り返った。
神林さんは、TVシリーズのときから映画レベルの処理を求められていたため大きな違いを感じたことはなかったそうだが、大きなスクリーンで見られるということで、普段髪に入っているグラデーションを瞳の中にも入れたそう。もし次のTVシリーズが制作されることがあれば、同じような処理が求められるのでは!?と不安を滲ませ、会場からは笑いが。ちなみに五十嵐監督からは、映画なので手間のかかることをしてほしいと話があったそうだ。
竹本さんは、1つのエピソードを長い尺で描けるので、それぞれのシーンをしっかり掘り下げられることが映画の魅力だと語った。
思い入れのあるキャラクターについての質問では、それぞれがお気に入りというよりも共感できるキャラクターを挙げていた。鈴木さんはプロデューサーという自分の立場を考えると、武装探偵社を導く福沢諭吉に憧れるが、苦労性で常に理想を追い求める国木田独歩に共感しているそう。実際は妥協してしまうこともあるそうで、映画の国木田から分離した異能のほうかも?と話し会場を沸かせていた。(映画で国木田から分離した異能の持つ手帳には“妥協”と書かれていた)
菅野さんは岩手県出身ということで宮沢賢治を推したいそうだが、宮沢はなかなか大きな活躍がないキャラクター。少しおじさんのような雰囲気を持つ織田作之助を推しているとアピールした。ちなみに菅野さんは血なまぐさいシーンの担当が多いそうで、TVシリーズ“黒の時代”では織田作が養う子どもたちが爆破されるシーンを担当したことについて、「辛かった」と振り返っていた。
神林さんは鈴木さんと同じく国木田推しだが、こちらは手帳に書いたものが具現化されるという便利な異能に目を付けたため。そして竹本さんがTVシリーズの時は森 鴎外を推していたと語ると、会場からは驚きの声が。
皆さん大人かつ大変な仕事に携わっているので、若手のキャラクターよりも年長者を推したくなるようだった。
お次は、映画が公開となり今までかかわってきたことについて、どんな気持ちを抱いているかがテーマに。鈴木さんは自身も映画好きだそうで、今回自身が携わった作品を映画館でファンと一緒に見られること、上映後のファンの一喜一憂する姿をその目で見られることが嬉しかったと、感慨深そうに語ってくれた。
菅野さんは作画について、キャラクターデザイン・総作画監督の新井伸浩さんから、TVシリーズよりも作画に修正が入ることが多く、悔しい気持ちにもなったと振り返る。ちなみに中也の汚濁シーンには全く修正が入らなかったそうで、「それはそれで修正してほしい!」と語り、会場からは笑い声が。
神林さんは、TVシリーズのチームそのままのメンバーで制作できたので、今回の映画をやり切ることができたと語った。竹本さんは制作デスクということで一番大変だったのでは?と話題が振られたが、Twitterなどで見かけるファンの反応を励みにやり切ったと笑顔を見せていた。
ちなみに年末にはボンズ社内で再度、間に合わせるためのスケジュール決起集会を行ったそうで、鈴木さんはスタッフ陣からの刺すような視線を受けてしまったそうだ。
東放学園映画専門学校にはクリエイターを目指す学生が通っているということで、それぞれの仕事をするにあたって大事なことは?という、学生なら気になる話題も。
鈴木さんは、プロデューサーとしての肩書がつく前に、自分が将来的にどんな人たちと仕事をしたいのかを考え、人間関係を大事にできる人が向いていると、人と人との繋がりの重要性を説く。菅野さんは、ただ絵を描くだけではなく、キャラクターそれぞれの性格を理解し、どれだけ彼らにのめり込むことができるのかが大切だと語った。
また神林さんは、ツールや技術は現場に入ってから学ぶことが多いので、時間の融通がきく学生時代は、いろいろなものを見て吸収し、感性を磨くことをオススメ。竹本さんは制作デスク・制作進行は、将来プロデューサーや監督・演出といった仕事に携わるための通過点になる仕事なので、しっかりと自分のやりたいことを見据えて臨んでほしいと語った。
来場者からの質問コーナーでは、スタッフ陣がぜひ見てほしいシーンは?という質問が飛び出した。鈴木さんは、榎戸洋司さんが手掛けた脚本は隙がなく、太宰 治、フョードル・D、澁澤龍彦の3人の会話にある言葉遊びなど、あらゆるセリフに注目してほしいとアピールしていた。
最後は制作陣から、4月から始まるボンズの新作『ひそねとまそたん』や『僕のヒーローアカデミア』などもぜひ応援してほしい!と力強いコメントが贈られ、イベントは幕を下ろした。
DATA
■『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE(デッドアップル)』
公式サイト:http://bungo-stray-dogs.jp/
Twitter:@bungosd_anime
ROADSHOW:
2018年3月3日
STAFF:
原作=朝霧カフカ
漫画=春河35(「ヤングエース」連載)
監督=五十嵐卓哉
脚本=榎戸洋司
脚本協力=朝霧カフカ
キャラクターデザイン・総作画監督=新井伸浩
エフェクト作画監督=橋本敬史
メカニックデザイン=片貝文洋
プロップデザイン=金田尚美
サブキャラクターデザイン=菅野宏紀
美術監督=近藤由美子
美術監督補佐=熊野はつみ(KUSANAGI)
色彩設計=後藤ゆかり
撮影監督=神林 剛
CGディレクター=安東容太
編集=西山 茂
音楽=岩崎 琢
音響監督=若林和弘
音響制作=グロービジョン
主題歌オープニングアーティスト=GRANRODEO
主題歌エンディングアーティスト=ラックライフ
アニメーション制作=ボンズ
配給=角川ANIMATION
製作=文豪ストレイドッグスDA製作委員会
CAST:
中島 敦=上村祐翔
太宰 治=宮野真守
芥川龍之介=小野賢章
中原中也=谷山紀章
泉 鏡花=諸星すみれ
国木田独歩=細谷佳正
江戸川乱歩=神谷浩史
谷崎潤一郎=豊永利行
宮沢賢治=花倉洸幸
与謝野晶子=嶋村 侑
谷崎ナオミ=小見川千明
福沢諭吉=小山力也
森 鴎外=宮本 充
エリス=雨宮 天
織田作之助=諏訪部順一
坂口安吾=福山 潤
フョードル・D=石田 彰
澁澤龍彦=中井和哉
©2018 朝霧カフカ・春河35/KADOKAWA/文豪ストレイドッグスDA 製作委員会
東放学園映画専門学校 アニメーション映像科概要
アニメ制作の全工程が2年間で総合的に学べる!
今や世界に誇る日本文化“ジャパニメーション”。アニメの制作現場ではデジタル化が進み、分業化されていたそれぞれの工程のクロスオーバーが進んでいる。東放学園映画専門学校 アニメーション映像科では、2年間のカリキュラムの中で、アニメ制作の全工程を学ぶことが可能。専門知識、技術を身につけることはもちろん、ほかの仕事内容を知っておくことで、現場の即戦力となれる!
→東放学園映画専門学校 アニメーション映像科公式サイトはこちら
アニメーション映像科オープンキャンパス“アニメ制作体験”
手描きによるアニメ作画“RETAS STUDIO”、“After Effects”、“3ds Max”など最新のデジタルツールを使用した仕上、撮影、CGまで、さまざまなアニメの制作工程を体験できます。
タグ