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劇場版『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』はどんな内容に? 塩谷直義監督にインタビュー
2019.01.24 <PASH! PLUS>
PASH! PLUS
『PSYCHO-PASS サイコパス』の新作劇場版シリーズ『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』が、いよいよ1月25日から順次上映開始!
2012年10月にTVアニメ第一期、2014年10月には第二期が放送、2015年1月には劇場版が公開された『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズ。4年の沈黙を破り公開される『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』(以下、SS)は、3カ月連続で公開される完全新作劇場版となっています。
Case.1では宜野座伸元(CV.野島健児)&霜月美佳(CV.佐倉綾音)が、Case.2では須郷徹平(CV.東地宏樹)&征陸智己(CV.有本欽隆)が、そしてCase.3では狡噛慎也(CV.関 智一)がそれぞれフィーチャーされ、過去シリーズでは描かれなかった、キャラクターたちの物語が描かれます。
本作のストーリー原案・監督を担当した塩谷直義さんに、制作の経緯や見どころなどについてお話を伺いました。
この『SS』という作品から新しいものが生み出される状況にしたい
――今回の劇場版制作に至る経緯をお聞かせください。
次の展開をどうするかというお話をいただいたのは、4年前の劇場版公開後すぐでした。ですので、自分の中では改めて続編を作っているという感覚ではなく、継続して作っていて今に至るという感じですね。
今まではシビュラシステムをドラマの中軸に、「人がどういうふうに考え葛藤していくのか」というものを描いてきました。今作をやるにあたっては、シビュラと向き合うような本線のドラマではなく、人物に絞ってフィーチャーして描けないかと構想しました。
――キャラクターは監督のほうで絞りこんだのですか?
はい。今回の『SS』に関しては、こういう方式で作れないか、という段階で、須郷と征陸、宜野座と霜月、あとは狡噛を考えていました。その中で、軸となるあらすじ、そして各登場人物が何に向き合い対峙するのか、この中心になる構想を、脚本家さんに投げかけて、一緒に作っていきました。
プリプロにはかなり時間をかけました。脚本家の深見さん・吉上君が描きたいドラマと、僕が構想していたドラマを巧く融合させたかったので、お二方にはかなりのプロット・脚本を書いていただきました。
ずっとその時に意識していたのが長編ドラマのピースになるエピソードにする事でした。簡単に言うと大河ドラマ感です。大きな物語の流れの中に、断片的にキーになるポイントを置いて、この先の時系列がどうなっていくのか、ある程度構想しつつ今作を作っていました。
あと個人的には、『PSYCHO-PASS サイコパス』はもっといろいろな表現ができる題材だとずっと思っていたのですが、それを描けるタイミングがなかなかなかったんです。あったとしても、やっぱりシビュラシステムに関わるメインストーリーのラインがあると、そこから多少外れるドラマは省略せざるを得なかったりもして。そこをしっかり描いたおもしろいものもできるのになと思っていました。
各エピソードの舞台については、東京でドラマを作らない、というのは初めから決めていました。3本それぞれ単独の完結するドラマで、バリエーションをつけて。エピソードを彩る全体のカラーも変えていきたかったというのもありましたね。
Case.1は青森の雪山の中というワンシチュエーョンでリアルタイムな時系列を追うドラマ。Case.2は沖縄ですが、100年先の、シビュラ社会で様変わりした中で起きる話を。Case.3は南アジアにある架空の国が舞台となっています。
――『Sinners of System』というタイトルに込めた意味とはどういったものでしょうか?
『PSYCHO-PASS サイコパス』という作品はシビュラシステムが大前提としてあるドラマでした。ドミネーターがキーワードですね。犯罪係数を測れば是か非か判定されるシステムで、本線のドラマはそれをフィーチャーしないといけません。そうではなく、もっと登場人物にフォーカスしていこうというのが、最初のイメージでした。物語のバックグラウンドって見えにくいところなので、人間の描写に落とし込んでいこうと。
『Sinners of System』というタイトルには、システムによって罪人とされた人達・その物語という意味を込めています。
ドラマというのはいろいろな人と人が出会ったり、触れ合ったりしてストーリーが動くじゃないですか。そういう彼らにフィーチャーしたタイトルをどういう呼称にしたらいいか考えていたところ、登場人物たちは翻弄されていてもシステムの囚人的な存在から脱せないでいる。そんな人々を描くんだというところでフッとはまったんです。
――個別のエピソードについて監督から解説をいただけますでしょうか。
まず霜月・宜野座編であるCase.1の『罪と罰』はどちらかというと本線に近い刑事ドラマにしようかなと思っていました。執行官の宜野座と監視官の霜月のバディものです。この二人って僕的には近い存在だと感じているんです。
2人とも潜在犯に対する強い憎しみを持っているけれど、それが本人たちの立ち位置で解釈がちょっと変わっている。特に宜野座は元監視官だし、霜月のことは自分の若い頃に重ねて見ているのではないかなと。
そんな2人が、ふたりだけでしか行動ができない状況になって、しかも潜在犯を助けなければならないというシチュエーションになったらどういうドラマになるのかなぁというのが、一番初めの発想でした。
そこで霜月の成長と、経験を積んでいる宜野座が彼女をサポートした上でどう考えているのかを描こうと。本作オリジナルの<サンクチュアリ>という施設、閉鎖され簡単に逃げ出すことの出来ない場所で事件は起きます。この事件は、100年後の日本を舞台にしている『PSYCHO-PASS サイコパス』の世界観の中で、起きうる可能性のある事件を描きたいと思い作ったのがCase.1のお話です。
――霜月はずいぶん丸くなっているように感じます。
そうなんです。自分的にはTVアニメ二期を経て成長させたつもりで、劇場版では更に成長した姿を見せてあげようって思っていたんですけど、残念ながら出番が少なかったんです。成長したという感じが出せなかったので、そこを取り上げたかったというのも大きくありました。
――自分でエースと言っちゃうノリがおもしろかったですね。
そこがあの子の魅力だなぁと思っているんです。成長しているけど、本人の性格が色濃く出てしまうんですよね。でも別にわがままを言ってるんじゃなくて、自分をエースだというシーンにしても、その場の雰囲気を明るくしようとする彼女なりの優しさで、みんなを勇気づけようとしている部分なんですよ。
でも、地がああだからちょっとトゲがあるというか、ちょっと強いというか。でもそんな霜月が僕は人間らしく好きです。
ちょっと語弊があるかもしれないですけど『PSYCHO-PASS サイコパス』を観てる方々にとって、霜月ってどちらかというとストレスに近い存在に見えると思っていて…。でもマイナスからスタートするからこそ、彼女の成長を見守ってあげることが今作のキーになる部分だと思っています。
――以前はもっと朱に対してアタリが強かったですよね。
自分と考え方が異なるものを否定していたのも、一杯一杯になっているところからでしょう。彼女なりに色んな経験を積み、ようやく他の人を客観的に見られるようになったんだと思います。職場に馴染んで自分の立ち位置が判ってきたんじゃないですかね。こういうふうにあるべきなのかな、と。
着任直後は負けず嫌いで自己顕示欲が強かった。そんな彼女も、朱の影響を次第に受けて大人になった。今では朱から事件を任せられるまでの存在になりました。我は強いですが頼れる存在に成長しています。
――Case.2はハードな物語になりました。
そうですね。『SS』でどうしても描きたいと思っていたのが、case.2のエピソードでした。正直、須郷と征陸メインのドラマを作ることって普通あり得ないですよね。これまでの本編の中ではまったく接点のなかった2人なので。だからこそ、このタイミングでしか描けないエピソードであり、今回のシリーズで描くべき物語なのです。
須郷撤平という人物が、僕はとても魅力的だと思っているんです。個性的で寡黙、本人が自分の事を喋るタイプではないので、逆に彼の過去に何があり、潜在犯落ちし、今に至るのか。とても気になる存在だと思うんです。二期の作中でも描かれたように、肉の楯になる事を志願する須郷。なにがあってこういう人間形成をされてきたんだろうかって。
だからこそ今作で彼をメインにし、その過去を描こうと決めました。なぜ刑事になったのかというところで、昔ながらの刑事に影響を受けたとか、誰かの背中を追ってるのかも知れない、そんな話が須郷の過去にあるべきだと思いました。そのような影響を受ける存在感のある刑事は、征陸しかいません。
もう一人須郷に影響を大きく与えた人物。それが軍人時代の先輩である大友逸樹、その奥さんである大友燐です。この三人の人間ドラマは、やってみたかった題材です。こういう過去があったからこそ、須郷が寡黙になりえるんじゃないかなと思って描きました。
少しだけ掘り下げて説明すると、この物語は、たった一つの言葉が人の運命が大きく変えてしまう。その瞬間を描きたかったというのがあります。その言葉は、予告でも使用された台詞、『強く生きろ』です。これが実際どういう意味かは、本編を見て感じていただきたいです。
――読者へのメッセージをお願いします。
劇場版から4年ですか。前作を観ていただいた方には、オリンピック一回分お待たせしたんですけど、待って頂けただけの価値がある作品になっています。
この『SS』という作品から新しいものが生み出される状況にしたいのでぜひ、まずはこれを観ていただいて、いろいろなことを感じていただければな、と思っております。応援していただければうれしいです。
『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System』公開日
■Case.1 罪と罰:2019年1月25日(金)より公開
【ストーリー】
「今回は、私の事件ってことでいいですよね、センパイ」
2117年冬、公安局ビルに一台の暴走車両が突入する事件が発生。
その運転手は青森にある潜在犯隔離施設 〈サンクチュアリ〉の心理カウンセラー・夜坂泉だった。しかし取調べ直前に夜坂の即時送還が決定する。監視官の霜月美佳は、執行官・宜野座伸元らとともに夜坂送還のため青森へ向かう。
そこで待っていたのは、〈偽りの楽園〉だった。
CAST:
宜野座伸元=野島健児
霜月美佳=佐倉綾音
夜坂 泉=弓場沙織
久々利武弥=平井祥恵
辻飼羌香=岡寛 恵
松来ロジオン=小山力也
玄沢愛子=斉藤貴美子
能登耕二=多田野曜平
烏間明=中川慶一
常守 朱=花澤香菜
須郷徹平=東地宏樹
雛河 翔=櫻井孝宏
六合塚弥生=伊藤 静
唐之杜志恩=沢城みゆき
STAFF:
SSストーリー原案・監督:塩谷直義
脚本:吉上 亮
総作画監督:中村 悟
作画監督:新野量太、古川良太、鈴木俊二、森田史、中村悟、諸貫哲朗
演出:黒川智之、下司泰弘
撮影監督:荒井栄児
3D:サブリメイション
色彩設計:上野詠美子
美術監督:草森秀一
音響監督:岩浪美和
音楽:菅野祐悟
キャラクターデザイン:恩田尚之、浅野恭司、阿部 恒
シリーズ原案:虚淵 玄
キャラクター原案:天野 明
アニメーション制作:Production I.G
配給:東宝映像事業部
■Case.2 First Guardian:2019年2月15日(金)より公開
【ストーリー】
「“フットスタンプ作戦”……あそこで、本当はいったいなにがあったんですか!」
常守 朱が公安局刑事課一係に配属される前の2112年夏、沖縄。国防軍第15統合任務部隊に所属する須郷徹平は、優秀なパイロットとして軍事作戦に参加していた。
三ヶ月後、無人の武装ドローンが東京・国防省を攻撃する事件が発生する。事件調査のため、国防軍基地を訪れた刑事課一係執行官・征陸智己は、須郷とともに事件の真相に迫る。
CAST:
須郷徹平=東地宏樹
征陸智己=有本欽隆
青柳璃彩=浅野真澄
大友逸樹=てらそままさき
大友 燐=大原さやか
狡噛慎也=関 智一
宜野座伸元=野島健児
縢 秀星=石田 彰
六合塚弥生=伊藤 静
唐之杜志恩=沢城みゆき
花城フレデリカ=本田貴子
常守 朱=花澤香菜
霜月美佳=佐倉綾音
STAFF:
SSストーリー原案・監督:塩谷直義
脚本:深見 真
総作画監督:阿部 恒
作画監督:中村深雪、古川良太、阿部 恒、諸貫哲朗
演出:下司泰弘
撮影監督:荒井栄児
3D:I.G 3D
色彩設計:上野詠美子
美術監督:草森秀一
音響監督:岩浪美和
音楽:菅野祐悟
キャラクターデザイン:恩田尚之、浅野恭司、阿部 恒
シリーズ原案:虚淵 玄
キャラクター原案:天野 明
アニメーション制作:Production I.G
配給:東宝映像事業部
■Case.3 恩讐の彼方に__:2019年3月8日(金)より公開
【ストーリー】
「わたしの、先生になってもらえませんか」
2116年に起きた東南アジア連合・SEAUnでの事件後、狡噛慎也は放浪の旅を続けていた。
南アジアの小国で、狡噛は武装ゲリラに襲われている難民を乗せたバスを救う。その中には、テンジンと名乗るひとりの少女がいた。かたき討ちのために戦い方を学びたいと狡噛に懇願するテンジン。
出口のない世界の縁辺で、復讐を望む少女と復讐を終えた男が見届ける、この世界の様相とは…。
CAST:
狡噛慎也=関 智一
テンジン・ワンチュク=諸星すみれ
花城フレデリカ=本田貴子
キンレイ・ドルジ=志村知幸
ギレルモ・ガルシア=磯部勉
ツェリン・グルン=高木 渉
ジャン=マルセル・ベルモンド=鶴岡 聡
STAFF:
SSストーリー原案・監督:塩谷直義
脚本:深見 真
総作画監督:恩田尚之、阿部 恒、中村 悟
作画監督:中村深雪、古川良太、竹内知海、古川尚哉、市川美帆、黄瀬和哉、阿部 恒、諸貫哲朗、新野量太、中村 悟
演出:河野利幸、遠藤広隆
撮影監督:荒井栄児
3D:サブリメイション
色彩設計:上野詠美子
美術監督:草森秀一
音響監督:岩浪美和
音楽:菅野祐悟
キャラクターデザイン:恩田尚之、浅野恭司、阿部 恒
シリーズ原案:虚淵 玄
キャラクター原案:天野 明
アニメーション制作:Production I.G
配給:東宝映像事業部
©サイコパス製作委員会