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主人公は「なにがなんでも復讐してやるという気持ちがとにかく強い」映画『移動都市 /モータル・エンジン』石川由依、島﨑信長インタビュー
2019.02.26 <PASH! PLUS>
PASH! PLUS
3月1日より公開の映画『移動都市/ モータル・エンジン』。フィリップ・リーヴのファンタジー小説『移動都市』を原作とする本作は、制作・脚本を『ロード・オブ・ザ・リング』、『ホビット』のピーター・ジャクソンが手掛ける。
本作の舞台は、僅か60分で文明を滅ぼした“最終戦争”から数百年後の世界。荒廃した地を支配する巨大移動都市・ロンドンは、捕食した都市の資源を再利用、人間を奴隷化することで成長し続けていた。そして、母の復讐を誓う少女“ヘスター・ショウ”が、ロンドンで出会った青年トムや“反移動都市同盟”の仲間と共にロンドンへと反撃するというあらすじだ。
今回、映画『移動都市 /モータル・エンジン』の魅力に迫るべく、日本語吹き替えを担当したヘスター・ショウ役:石川由依さん、トム・ナッツワーシー役:島﨑信長さんに本作の見どころや演じたヘスター&トムの魅力、実写吹き替えへの思いなどを伺った。
ヘスター・ショウ役:石川由依さん
トム・ナッツワーシー役:島﨑信長さん
石川由依さん、島﨑信長さんインタビュー
――映画『移動都市/ モータル・エンジン』への率直な感想を教えてください。
石川:都市が移動する壮大な世界観とアクションシーンにただただ圧倒されましたし、(台本を読んでいて)ワクワクが止まらない作品だと感じました。
私が演じるヘスター・ショウは自分の母親を殺したヴァレンタインへの復讐心で突き進んでいくんですけど、そのなかでトムと出会い、2人の関係性のなかで変化が生まれ、そしてヘスターの過去の話も登場したり……と様々な人間模様を見ることができる作品でもあります。壮大な冒険だけじゃなく、色々なドラマにも見どころがある作品です。
島﨑:僕自身もファンタジー作品が好きなんですけど、『移動都市/ モータル・エンジン』はそんな人にはたまらないこだわりが随所に見ることができる作品だと思います。
スケールの大きさ以外にも、人間関係や個人のバックボーン、登場人物の変化や成長など人間ドラマも深く、そして自然に描かれていたので、そのバランス感覚がとっても素敵だと感じました。(物語の)大きな部分も小さな部分も丁寧かつバランスよく描かれているので難しい単語や登場人物の(突発的な)行動も“なぜそうなのか”が感覚的に分かるんです。それに複雑な感情が描かれていても「人間ってそうしちゃうときもあるよね」、「きっとこうだったんじゃないかな?」と思わせてくれる。想像が膨らみやすく、そして想像させてくれやすい素敵な作品です。
――石川さんはヘスター、島﨑さんはトムをそれぞれ演じられています。おふたりが演じているキャラクターの魅力はどんなところにありますか?
石川:ヘスターは復讐することが1番の目的なのですが、普通の人であったら挫けてしまうであろう出来事があっても屈しないし、諦めない。「なにがなんでも復讐してやる」という気持ちがとにかく強い子です。
ただ、彼女自身は特別に鍛えられたような子ではなく、(母親を殺されてしまうという)悲惨な出来事がなければ(闘いとは無縁の)普通の人生を送っていた子だと思うんです。だからこそ、彼女は弱い部分や恐怖心を持っていると思うんですけど、それに勝るほどの強い復讐心を持って立ち向かっていくんです。
そして、「復讐してやる」という気持ちだけを持って突き進んでいたけれど、トムと出会い共に過ごすうちに復讐心で固まっていた気持ちが良い意味でほぐされて、周りの人間を見れるようになったり、育ての親・シュライクと対峙できるようになったりと、とてもゆっくりではあるけれど2時間のなかで成長しているなと感じたキャラクターでした。
島﨑:トムは移動都市・ロンドンで育っているのですが、移動都市の裏側や世界の真実を知らずに生きてきたごく普通の男の子。そんな子がいきなりハードな展開に巻き込まれていくわけなんですが、彼もヘスターと同じく折れない、諦めない、そしてしぶとい(笑)。
そんな彼の強さは戦闘力的な強さではなく、気持ちが折れないことに加え、良い意味で察することができない鈍感さにあると思うんです。「こんな状況だと怖くて普通は黙るよね!?」というシーンでも、気にせず喋り続けていたりと、大らかなのか鈍いのか分からないところがある(笑)。
それはトムの適応力の高さ、物事に偏見を持っていないからできること。これまでの常識がガラっと変わってしまうことを突き付けられても、彼は自分で見て聞いたことを信じることができるんです。最初、ロンドンで暗殺を試みようとしていたヘスターに出会った時も、偏見を持たず、コミュニケーションを取っていくうちに目の前のヘスター自身を見てどんな人間なのかを受け入れていきましたく。そこが彼の魅力的なところであり凄いところだと思いましたね。
僕、トムのように前向きに抗っていく人が好きなんですよ。僕自身もそうありたいと思って生きていますし、抗っていくからこそ変化や成長があり、関係性も変わっていくしドラマがある。トムは前向きだし、行動力もあるし、好奇心もあるし。だからこそやらかしてしまうこともあるんですけど、そこも含めて人間味があって僕はトムが好きですね(笑)。
――アフレコはおふたりとも同じ日に実施されたとのことですが、お互いの演じている声を聴いた時の印象はいかがでしたか?
石川:島﨑さんはトムに似ているなって思っていて(笑)。雰囲気やぱっと見の印象がとても似ているので、トムとして認識しやすかったですし、声を聴いた時に「あっトムだ!」と自然に受け止められましたね。
島﨑:やったー! 石川さんはヘスターに雰囲気は似ていないんですけど……むしろ似ていたらなんなんやって思いますけど(笑)。
石川:似ていたら怖いですよね。憎しみで生きている感じになっちゃいますもんね(笑)。
島﨑:ただ、僕自身の勝手な想像とお芝居を見た時の印象でいうと、石川さんはヘスターと同じように心の芯の強さや諦めない気持ちのある人だと思います。むやみに戦うのではなく、大切なことのために闘い、抗う人なんじゃないかな。そういう意味では台本を読んだ段階でヘスターは石川さんに合うと思いました。実際に石川さんのお芝居を観た時に、ヘスターの“完全に戦士ではない”部分、そして未熟さや女の子らしさも感じられてよりぴったりだなって思いました。
石川:芯の強い子や一途な子を演じることが多いんですけど、そういう役柄が多いということは島﨑さんが言うように自分自身にもその部分があるのかもしれませんね。このお仕事を始めて長いのですが、辞めようと思ったことはないし、1つのことをやり続けるという意味ではヘスターと似ているかもしれませんね!
――巨大都市・ロンドンと反移動都市との闘いが描かれている本作。作中、殺伐としたシーンも数多く登場しますが、アフレコ現場の雰囲気もやはり殺伐としてものだったのでしょうか?
島﨑:ふたりで収録したんですけど、始終和やかな雰囲気でした!
石川:殺伐とはしていなかったですね(笑)。
――なんと! 緊張感漂う現場をイメージしていたので意外でした。
島﨑:僕は緊張感がありつつもリラックスできていたほうが良いパフォーマンスができるタイプなのでとても良い環境でした。もちろんシーンや話数によってはピリっとしていた方がいいこともあるんですけど、そういう空気って意識して生まれるものではなく、自然と醸し出されるものだと思うんです。
現場に入った当初は、映画の吹き替えでメインの役柄を経験したことがなかったのでドキドキしていたし、構えていた部分はありました。そして、僕は勝手に「石川さんは(映画の吹き替えに)慣れているんだろうな……!」と思って現場に挑んでいたんですけど、石川さんも僕と同じくメインの経験がないことが判明して、お互いに「頑張りましょう!」というところから始まりました(笑)。
石川:島﨑さんとは他作品でご一緒させていただいたことがあったので、お芝居への信頼もありましたし、変に砕け過ぎず、かといってガチガチに緊張することもない良い環境だったのでキャラクターにも入り込みやすかったです。スタッフさんもとても優しかったので、気になったシーンのリテイクをお願いしやすかったですし、納得いく演技をやらせていただけたのは暖かい環境があってこそだったなと思いました。
――“型にはまらない役柄”を演じる上での苦労もあったかと思うのですが、収録で苦労したことはありますか?
島﨑:表現や気持ちの流れは“型にはまらない”からこそ楽に演じることができましたね。型にはまっているキャラクターだと「なぜそうなったんだろう」と困る時があるんですよ。お約束だからというテンプレートにはめられてしまっていると、キャラクター個人を細かく見ていったときに繋げることの難しさを感じてしまうんですよね。
例えば“ツンデレ”というテンプレートがあったとしても、キャラクター個人をしっかり掘り下げてみるとただ“ツンデレ”なわけではなく、そこに至る理由や背景があったりしますよね。『移動都市/ モータル・エンジン』は、ひとりの人間がそこに生きていて、感情があって、行動していく姿が丁寧に描かれているので僕としては演じやすかったです。
演じる上で難しかった点をあげるとすれば息の演技ですね。走るシーンや息があがっているシーンが多かったので、細かい息の演技には苦労しました。実写映画だと俳優さんの息の演技にリンクさせなければいけないので、そこが難しかったですしまだ慣れない部分だと思いました。息もセリフも気持ちが乗った表現なので、わざとらしくならないようにすることは意識しました。
石川:ヘスターは“復讐”するという強い感情こそ描かれているのですが、あまり感情を表に出さないミステリアスな子でもあったので、そういったところを呼吸の仕方や演技で表現するのは難しかったですし、島﨑さんと同じく実写の息芝居と合わせるのは苦労しました。
――ありがとうございました!
[取材・文/河内香奈子]
【キャスト】
ヘラ・ヒルマー(ヘスター・ショウ)
ロバート・シーアン(トム・ナッツワーシー)
ヒューゴ・ウィーヴィング(サディアス・ヴァレンタイン)
ジヘ(アナ・ファン)
ローナン・ラフテリー(ベヴィス・ポッド)
レイラ・ジョージ(キャサリン・ヴァレンタイン)
パトリック・マラハイド(マグナス・クローム)
スティーヴン・ラング(シュライク)
【日本語吹き替え版】
石川由依(ヘスター・ショウ)
島崎信長(トム・ナッツワーシー)
嶋村侑(キャサリン・ヴァレンタイン)
下野紘(ベヴィス)
大塚芳忠(サディアス・ヴァレンタイン)
朴路美(アナ・ファン)
大塚明夫(シュライク)
津田健次郎(コーラ)
井上麻里奈(サスヤ)
銀河万丈(クローム市長)
楠大典(ポムロイ博士)
寺依沙織(パンドラ・ショウ)
【スタッフ】
監督
クリスチャン・リヴァーズ
脚本・製作
ピーター・ジャクソン
フラン・ウォルシュ
脚本
フィリッパ・ボウエン
原作
フィリップ・リーヴ
製作
ゼイン・ワイナー
アマンダ・ウォーカー
デボラ・フォート
製作総指揮
フィリッパ・ボウエン
ケン・カミンズ
撮影監督
サイモン・ラビー
プロダクションデザイン
ダン・ヘナ
編集
ジョンノ・ウッドフォード=ロビンソン
衣装デザイン
ボブ・バック
音楽
トム・ホルケンボルフ
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