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アニメ『デデデデ』大葉圭太役・入野自由さんインタビュー「大葉くんは、異種間のディスコミュニケーションを担う中核。 でも中身はもしかしたら子供なのかもしれません」
2024.12.19 <PASH! PLUS>
PASH! PLUS
アニメ『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』のアニメシリーズと、映画版の前章・後章が各配信サービスにて配信スタート。これを記念して、PASH!5月号に掲載された大葉圭太役・入野自由さんのインタビューの一部をお届けします。
※本記事は2024/4/10発売「PASH!5月号」にて掲載したインタビューより、一部内容を抜粋したものになります。
※本記事は劇場版前編までのネタバレを含みます。ご鑑賞後にお読みください。
「大葉くんは、異種間のディスコミュニケーションを担う中核。
でも中身はもしかしたら子供なのかもしれません」
――『デデデデ』の原作漫画の印象を教えてください。
僕は以前から原作者である浅野いにお先生のファンなんですが、『デデデデ』は浅野先生の作品群のなかでもちょっと毛色が違うと感じました。絵がとても緻密でコマやフキダシの使い方もそれまでの作品とは違いますし、複雑な設定や物語の大きな転換があったり、考察がはかどるような難解な部分もあって、一気に読みたくなる作品だと思います。
――浅野先生の作品の魅力とは何だと思いますか?
物語のなかに、読んでいて心が痛くなるほどの切なさや苦しさ、まっすぐさ、そんないろいろなものが凝縮されているんです。読んでいると思い出したくない記憶や感情まで引き出される感じがして、読み続けるのが辛くなる瞬間もあるんですが、それでもグイグイ引き込まれてしまう。そして、読者の心を傷つけるのではなく、最終的には優しく包み込んでくれる温かさもある。そこが浅野作品の最大の魅力だと思います。また、読者にわかりやすい「答え」をくれず、考える余地を与えてくれるので、「これってどういうことなんだろう」と思うと、また最初から読みたくなる。そういうところも含めて全部好きなんです。
――本作で入野さんが演じられた大葉圭太の人物像について、どのようにとらえていますか?
大葉くんは見た目こそ人間ですが、中身は「侵略者」。その異種間のディスコミュニケーションを担う中核となる役だと思います。作中では中身の「侵略者」の年齢について触れられていませんが、行動のうかつさや稚拙さからすると分別のある大人ではなく、ひょっとすると中身は子供なのかもしれません。そして、大葉くんの身体を使っているから地球の言葉を話せるけど、あまり意味を理解していない。そういう点を踏まえて、「普通っぽいけれど、この人なんかちょっと変」というポイントを意識して演じました。
――アフレコの際、音響監督や黒川アニメーションディレクターから何か指示はありましたか?
大葉くんがパペットを使って話すシーンがあるんですが、当初のプランでは、パペットが話すときは声を変えて演じることになっていたんです。でも、浅野先生に確認していただいたところ「パペットも声を変えずに、そこは大葉としてしゃべっている」とお話がありました。浅野先生には細かい部分もチェックしていただいているようで、たとえば「イソベやん」が内緒道具を出すときの効果音や「おんたん」のイントネーションなど、僕らが思っていたのとは違っていて、新鮮な驚きを感じましたね。
――入野さんは浅野先生のファンだとのことですが、お会いしてみていかがでしたか?
浅野先生にお会いした際は「難しい役ですが、がんばってください」とお声掛けいただけてうれしかったですね。一方、僕は予てから先生の作品のファンだと、お伝えすることができました。
――本作の主人公である門出とおんたんの人物像や魅力について、入野さんはどのようにとらえていますか?
門出はおとなしいメガネっ子かと思いきや、想いを寄せる先生にはグイグイ接近していくなど、意外と大胆で大人っぽいところがあるんです。どこのクラスにもいそうな女子高生なのに、そうした内面のギャップが魅力だと思います。一方、小学校時代の門出の姿も描かれましたが、女子高生のときとは全然性格が違っていて。自分をいじめてくる同級生には毅然と反発して、「侵略者」と知り合って超技術の道具を手に入れてからは、自分が「悪」と見なした相手に制裁を加えていくという…。原作を読んだときは、門出の性格が違い過ぎて混乱しましたし、人は何かのきっかけで大きく変わってしまうものだという恐ろしさも感じました。
――では、おんたんについてはいかがでしょうか。
おんたんは終始わけのわからないことを言っていたりしますが、そんなパッと見の印象にだまされてはいけません。本当は誰よりも繊細で優しい子であることが、ちょっとしたやりとりから垣間見えるところが素敵な子だと思います。小学生時代は高校生の彼女とは全然違って別人のように控えめでおとなしいんですが、優しいところは変わっていないのがいいですね。
――ふたりの「コンビ感」については、どう思われますか?
意味不明のセリフでまくしたてるおんたんと、それを冷静に受け流したり、的確なツッコミを入れる門出のやりとりは、かわいらしくてずっと見ていたいと思ってしまいます。そして、独特なノリからはふたりの固い絆が垣間見えるのがいいですね。門出とおんたんのふたりだけでなく、仲良し5人組のグループ感も見ていてほほえましいです。僕も学生時代、あんなふうに何人かで遊んでいたので、彼女たちのやりとりを見ているとあの頃を思い出します。だからこそ、5人組のひとりであるキホちゃんのシーンは、とても衝撃的でした。おんたんと門出、それぞれの想いが痛いほどに伝わってきて辛くなりました。
――門出役の幾田りらさんと、おんたん役のあのさんのお芝居の印象は?
アニメ以外のフィールドで活躍されている方々との共演は、とても刺激的でした。おふたりの個性的な声が、門出とおんたんという唯一無二のキャラクターの存在感と面白さを際立たせていると思います。
――完成映像をご覧になったご感想を教えてください。
映像としてのクオリティがものすごく高くて気合いが入っていることは、冒頭のシーンを見た瞬間にわかりました。でも、より難しいのは複雑な設定と入り組んだストーリーを、劇場アニメでどう見せるかだと思うんです。実際に本編を観ると、いくつかのエピソードが割愛されて、原作とは違う時系列で物語が構築されていますが、門出とおんたんの関係性に焦点を当てた作品として素晴らしい形に再構成されていました。また、言葉が宙に浮かんでいたり、時空の歪みなどの表現と発想がアニメでも見事に再現されていて、黒川アニメーションディレクターの細部へのこだわりを感じました。
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