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【前編】『勇気爆発バーンブレイバーン』監督・大張正己さん&EXILE/FANTASTICS世界さん対談「“自分が一番観てみたい作品を自らの手で作り出したい”と思ったのが出発点です」

2024.12.28 <PASH! PLUS>


PASH! PLUS

 2024年1月11日に放送がスタートし、大きな話題を呼んだオリジナルTVアニメ『勇気爆発バーンブレイバーン』。もうすぐ放送1周年を迎えることを記念して、PASH!2024年5月号に掲載された監督・大張正己さんと大張さん作品の大ファンであるEXILE/FANTASTICSの世界さんの対談インタビューを抜粋し、 【前編】【中編】【後編】に分けて2025年1月11日まで毎週公開いたします。

※本インタビューは全話のネタバレを含みます。ご注意ください。

目指したのは、
“誰も観たことがない作品”

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世界(以下、世) 僕が初めて観た大張監督の作品は『餓狼伝説』なんです。そこから気合いの入った親戚のオタクの先輩たちに、「あれ観ろ、これ観ろ」って教えてもらって『超人学園ゴウカイザー』や『超重神グラヴィオン』を観て。

大張(以下、大) その英才教育を経ての、本作なんですね。

 そうなんです。だから、子供の頃からずっとお世話になっていた監督とお会いできるのをとても楽しみにしてました。『ブレバン』は完全新作のオリジナルアニメ。監督ご自身が“集大成のような作品”と表現されていて、記念すべき40本目のオープニング担当作でもあるんですよね。

 ありがとうございます。そうなんですよ、多分日本記録…世界記録かもしれないそうで。

 凄すぎます! 早速なんですが、『ブレバン』はどのように企画されたものなんですか? 最初からやりたいことは全部決まっていたんですか?

 今回はCygamesさんとの初めてのお仕事で、「ロボットものをやりましょう」「どんなロボットものにしましょうか?」っていうところがスタートでした。それが、かれこれ5年くらい前の話。そのときに“今まで観たことがない故に、自分が一番観てみたい作品を自らの手で作り出したい”って思ったのが出発点ですね。

 最初に作品のタイトルロゴを見たときは、子供のころに好きだった勇者シリーズっぽい印象だったんですけど、キービジュアルが実写的で「これは、なんかヤバイことが起きるぞ!」って放送前からワクワクしたんです。

 リアルテイストのミリタリーものという要素もある作品なので、キービジュアルはあえてリアルに寄せたんですが、あの段階で気にかけてもらえてたなんて…すごい嗅覚だ(笑)。

 制作自体は、どこから手を付けられたんですか?

 キャラクターの開発ですね。美術設定がない状態でイサミとスミスを開発して、そこからブレイバーンを生み出して…という順序で。

 となると、キャラクターありきな部分が大きいと思うんですけど、イサミってこれまでのロボットヒーローものの主人公とは、ちょっとテイストが違いますよね?

 実は、初期の頃のイサミってもっと可愛くて、いかにもロボットものの主人公的なルックスだったんです。

 え? ちょっと目が大きくて…って感じですか!?

 そうです。可愛くて、誰からも愛される感じで。

 今は…かなり無骨ですよね。それこそ、スミスやサタケの方が“主人公感”が強い気がします。

 そこなんですよ。僕的には、既存の主人公イメージとのギャップを狙った部分もあるんです。ただイサミのビジュアルって本来TVシリーズにはあまり向かなくて、目が小さくて瞳に描き込みができないから豊かな表情表現が難しいんです。だから、そこにあえて挑戦したキャラでもあり、でもあのルックスだからこそちょっと恥ずかしいパイロットスーツがギャップになって萌える部分もあったりして(笑)。本人が恥ずかしがる感じもいいなと思って、そこは(作品の)装置として使ってました。今回はほかにも色々と作品のなかで飛び道具を連発してますし、過去にやってきたものの財産を使ってるところもありますね。

 飛び道具というと、オープニングにもなっているブレイバーンのテーマソングが“ザ・特撮もの”っていう感じで大好きなんです! 昨今、作品のテイストや歌詞に世界観を生かすことはあっても、なかなか作品タイトルをバーンって入れる歌はないので、久々にド直球なアニソンが来て「これこれ!」ってなりました。実はFANTASTICSのアリーナツアーでは、ステージに立つ前にあの曲を聴いてテンションを高めていたんです(笑)。


 そうなんですか! ありがとうございます。今回、あくまで“ブレイバーンが歌っている”という設定にすることも、やりたかったことのひとつなんです。

 クレジットもブレイバーンですしね。

 あとオープニングでデスドライヴズのメンバーがシルエットになっているカットも、通常だとラスボスを頂点に置くのが当たり前だけれど、あえてセグニティスという可愛気のあるキャラクターをセンターに置きました。でも、ちゃんと観ると隠しボスも仕込んであったりして。

 ファンの間では“バリってる”って言い方をしますけど、そのスピリットをド頭から感じます。

 既存のパターンを破って、覆して、超えていくことが必要だし、やっぱりそこの部分がもの作りの楽しさでもありますからね。

 イサミがあの曲を聴いて「なんなんだ、この歌は!」って言ったアドリブとも相まって、本当に1話からフルスロットルで面白かったです。

 TBSでの全国放送で、北海道から沖縄までみんなが観られる環境を用意していただいたので、自分としてもブチかましたいなっていう想いはあったんです(笑)。あと、過去に手掛けた『銀装騎攻オーディアン』や『スーパーロボット大戦OG』など、リアルロボットとスーパーロボットが共演したものはあったんですけど、これほどまでに徹底した世界観を作ったことはありませんでした。だから1話ではリアルロボットが稼働している世界だけれど、そこに見たこともない常識を超えた存在としてスーパーロボットがやってくるという衝撃を完全な形で見せなければならなかったんです。そのために、まずはブレイバーンがいなくても成立するくらいリアルな世界観を作りました。科学的・軍事的な考証を繰り返して舞台のベースを作って、そこに突如ブレイバーンが現れるという違和感や衝撃というのが1話のすべて。だから、あれが視聴者に刺さらなかったら自分的にはもうダメだと思ったんです。

 監督的には、どのくらい自信があったんですか?

 完全に未知数でしたね。放送の数分前まで、緊張で吐きそうでしたもん(笑)。地上波の全国放送だし、リアルタイムでダイレクトにリアクションが来る時代に完全オリジナルの作品を世に出すというのはすごく勇気がいるというか、原作がある作品を映像化してお届けするときとは、やっぱり気持ち的に全然違うんです。今回はスタッフも、かも仮面さん、MORUGAさん、桜 水樹さん、寺岡賢司さん…と僕が直接声を掛けさせていただいて、理想とするビジョンを実現させるために最適なピースをセルフプロデュースではめていくような感覚で制作を進めました。アニメ映像に携わるのはこれが初めてという人もいる座組みだったけれど、“誰も観たことがない作品”というのは、僕にとってそこまで含めてのことだったんです。だから、そうやって作ったものが視聴者にどう受け取られるかという不安はありつつも、自分では「これでいける!」と思っていたのですごく自信もありました。

 あと、楽曲としては2話から流れたエンディングにも度肝を抜かれました。「いきなり、どうした!?」ってなって(笑)。あれも、いいコンセプトですよね。


大 デュエットにしようって話はあったんですけど、僕のイメージとしてはもっとスタイリッシュな感じでくるのかな?って思ってたんです。

 実際は舞台感あり、ちょっと狩人さん感ありな感じで。

 そう。逆になんか、それがすごく良かったんですよ(笑)。

 初見では本編の内容が頭から吹っ飛ぶぐらいのインパクトで、速攻でイサミ役の(鈴木)崚汰に「めちゃオモロいな!」ってLINEしたんです。

 あれは、本当にキャストの力によるところが大きくて、正直、今回は歌うことを前提として役者を選んではいないんです。あくまでも、芝居や音質の部分で選ばせてもらったので。だから、本当に歌が上手いおふたりだからこそ実現したエンディングだったとも言えますね。

 エンディングのクレジットもイサミ&スミスで、そこも徹底されてて。

 やっぱり今回は本人が歌っていることに大きな意味があるんですよ。

 そうですよね。9話でブレイバーンの正体が分かると、エンディングの見方がまた変わってくるし、歌詞やふたりの関係性の奥深さにあらためて気付かされました。先程スタッフさんのお話が出ましたけど、キャスティングではどんなことを意識されましたか?

 音響監督もやっているので、メインキャストは基本的には僕が選びました。イサミ役の鈴木くんは、友人の中澤一登くんが監督した『海賊王女』の雪丸役のときに、すごくいい役者だし、いい声質だなと思ってオーディションに参加してもらったんです。そうしたら、イサミにめっちゃハマって! 顔にもどことなくイサミっぽさがあるし(笑)、密かに「いつかイサミのコスプレをしてくれたらいいな」と思うくらいキャラと通じる部分があるんです。

 確かに、本人で実写化もいけそうですね(笑)。

 あと、阿座上(洋平)さんも『スーパーロボット大戦DD』の主人公・ディーダリオン役で出会って、いい声をしてるなって気になった存在でした。既に『ブレバン』の製作を考えていたから、絶対にオーディションに来てほしい、僕の作品に出てもらいたいなって思ったんです。逆にデスドライヴズのメンバーなどは、僕の監督作品でご一緒した役者さんに決め打ちでお願いしている人もいます。

 みんな「大好物です!」ってなる方々ばかりですよね。僕的には、イーラが強すぎて本当に怖くて!

 超強いし、卑怯なんですよね。ブレイバーンなんて、瞬時にやられちゃいましたから。アフレコ現場でイーラ役の津田(健次郎)さんに「大張さん、この作品はギャグなんですか?」って渋い声でひっそりと質問されたので、「そう見えるかもしれませんけど、キャラクターはすべて真面目です」ってお答えしたんです。そうしたら、「分かりました。では、やっちゃいますね!」って、敵ながらめっちゃめちゃカッコイイキャラにしてくださったんです。クールだけれど戦いに飢えていて、戦闘を喜んじゃうタイプがイーラ。一方、最後に出てくるラスボスのヴェルム・ヴィータは釘宮理恵さんにお願いすることで、純粋無垢な“生まれたばかりの命だからこその怖さ”を出しました。すべてのデスドライヴズの死を経て生まれた純粋すぎる生命体だからこそ、人類抹殺という判断を下すんです。

 イーラがラスボスポジだと思ってたのに、それをやっと倒したと思ったら別のラスボスが出てきて本当にどうなるのかと思いました。

 未来から来たルルでさえも知らない敵…それって、真の恐怖でもあるんです。

 僕はデスドライヴズのなかだとスペルビアの武人っぽい口調が大好きで、ブレイバーンとの関係性やキャラの立ち位置的にも唯一無二な感じがします。

 スペルビアが武士道精神を持ったロボットというのは割と初期からあった設定なんです。ブレイバーンと“推して参る”のが夢で、あの正々堂々さがあるからこそ敵でも味方でもなく互いに高め合う存在になっていく。実は、最初から声は杉田(智和)さんというのが僕のなかにあって、メカニカルデザインの山根理宏さんにもスペルビアは杉田さんの声がつく前提でデザインしてもらったんですよ。

 それは、杉田さんもめっちゃ嬉しいだろうな~!

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Text=犬飼かおり

【中編】は、1月4日(土)に公開予定。お楽しみに!

オリジナルTVアニメ「勇気爆発バーンブレイバーン」

■公式サイト https://bangbravern.com/
■X@bangbravern (https://twitter.com/bangbravern/)

©「勇気爆発バーンブレイバーン」製作委員会

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