にじさんじ ごった煮な個性の祭典「にじさんじMusic Festival powered by DMM music」イベントレポート

　2019年10月2日（水）、幕張メッセで開催された「にじさんじMusic Festival powered by DMM music」。大勢のライバーが3Dで登壇する大規模イベントだ。ニコニコ動画でもライブの模様は配信された。10月にして30℃の炎天下、会場外の物販には長い行列ができ、会場は3階席までびっちり埋め尽くされていた。

　本イベントには、月ノ美兎、静 凛、樋口 楓、剣持刀也、える、鈴鹿詩子、本間ひまわり、家長むぎ、葛葉、叶、物述有栖、シスター・クレア、緑仙、ドーラ、宇志海いちご、勇気ちひろ、花畑チャイカ、竜胆 尊、椎名唯華、森中花咲の20名が出演している。

　バーチャルライバーとは、2D・3Dのアバターをまとって活動する配信者のこと。バーチャルな存在のライバーたちはステージで歌い、踊り、観客に話かけ、コールに応える。生身の人間は舞台にいない。けれども間違いなく彼ら・彼女らはステージに実在している。今まで「にじさんじ」でも、月ノ美兎や樋口 楓がソロイベントを行ったり、ニコニコ超会議などの大型イベントにも参加しているものの、この人数が全員3Dで登壇するのは初だ。

　オープニングアナウンスは静 凛。落ち着いた品のある声のアナウンスに、ファンも大盛りあがり。ただ本人いわく、本番の舞台よりも、アナウンス読み上げの方が緊張していたとのこと。頼れる先輩のかわいらしい一面が見えた。

　まずはDJ WILDPARTYによる「にじさんじ」メンバーの楽曲ミックスが会場を盛り上げた。DMM Musicから発売予定のユニット曲がかかると、観客のテンションは急上昇。ペンライトを皆が掲げ、空気が温まりきったところで、ライブが始まった。

　開幕一曲目は、物述有栖とシスター・クレアのユニット「pure♡palet」による『pure♡paletワンダーランド』。ハイトーンでキュートな声を持つ2人は、物述有栖いわく「キュートの感覚が似て」いるらしく、息はぴったりだ。何カ月も前から振り付けを考えていたとのことで、丁寧でかわいらしい振り付けを見せてくれる。
　会場に対して物述有栖は元気に「もっとみんなの声を聞かせて！」と煽る。皆の声援を聞いたシスター・クレアは「はい、よくできました」と笑顔。トップバッターとして見事に会場を盛り上げた。物述有栖は「楽しすぎて」、シスター・クレアは「感動しすぎて」2人とも緊張せず舞台に立ったようだ。

　続いて竜胆 尊と鈴鹿詩子の『Preserved Roses』。2人は音楽ユニットではないが「うたみこ」の名でYouTubeで活動中。アダルティな会話を繰り広げる「おとなのじかん」というコラボ配信を行っている。際どいセンシティブな話題をガンガン繰り出す鈴鹿詩子と、無邪気にセクシャルな話題で楽しむ竜胆 尊の相性は抜群。安定感抜群なアルトボイスの鈴鹿詩子と、力強いソプラノボイスの竜胆 尊の歌声は見事なハーモニー。
　竜胆 尊が最後、鈴鹿詩子にまさかのキス。これには会場も大盛りあがり。完全サプライズすぎて、鈴鹿詩子もドギマギ。「嬉しかったけど、めっちゃ恥ずかしかった……」。おちゃめでやんちゃな竜胆 尊らしい行動だ。なお竜胆 尊は、鈴鹿詩子の家にダンス練習をしにいったとき、部屋が汚すぎて片付けからスタートしたエピソードを語り、会場を笑いに包んだ。

　葛葉と叶のユニット「ChroNoiR」。男女ともに愛されているユニット。今回は叶が初の３Dお披露目。そろって動く2人の様子に涙したとツイートするファンも多数いた。2人の歌う『ロデオ』は非常にセクシー。ダンスは2人で考えたものにアドリブを加えたそうだ。
　歌の途中、背中合わせになって「背中を預ける」信頼感を表現しているパートは、今まで苦楽を共にライバー活動してきた様子を思い出させてくれた。
　トークでは、サービス精神旺盛な叶に対し、「めっちゃ緊張してるわ!」と葛葉が言葉に詰まってしまって、みんなから「頑張れー!」と声援を受ける場面も。会場の男子と女子それぞれにコールを求めるシーンで、ChroNoiRが女子の観客に「俺達のお姫様ー!」と呼びかけたことで、女性の歓声が男性の声を凌駕するくらい会場に響き渡った。

　本間ひまわりとドーラのusus（アス）による『Buzz!!りムーブメント』は、明るく元気いっぱい、聞いていて幸せになれるロック調の曲だ。いつもどおり朗らかな本間ひまわりの魅力を最大限活かしながら、ドーラのセクシーかつ透き通る歌声が会場を盛り上げる。2人の歌声は、会場を埋め尽くす黄色（本間ひまわり）と赤（ドーラ）のペンライトの色が混じり合って、燃え上がっているかのような状態とシンクロして熱気を帯びていた。
　2人に葛葉と社 築が混じった4人ユニット「ド葛本社」は、疑似家族ユニットとして人気が高く、先日京都ではソロイベントが行われたほど。ドーラは母親役、本間ひまわりは長女役。今回も２人の息はぴったりで、曲でのノリは仲良し親子のよう。本間ひまわりは叶とはかなり前から一緒に遊んでおり、「にいやん」と呼んで慕っていた。今回3D化した叶の姿を初めて見て、涙するワンシーンも。

　剣持刀也と森中花咲は、男子高校生と女子小学生の年の差・身長差がファンの心を掴むコンビ。以前から配信でも、自称「おにロリ」コンビとして、喧嘩をしたり仲良くしたりとプロレスを繰り広げていた。
　今回歌ったのは『この闇を照らす光のむこうに』。最初はステージに森中花咲が1人だけ。10歳とは思えない貫禄を漂わせつつ、切なそうな表情でしっとりとバラードを歌い始める。
　そこに袖から剣持刀也が合流。自然にハモっていく演出に、ファンから歓声があがった。歌の後観客に背を向け、逆光の中に消えていく2人の姿は、歌詞にある「希望」の語を象徴するかのようで、胸に刺さる。

　椎名唯華と花畑チャイカの2人は落ち着いたバラード『瞬き』を披露。2人は「にじさんじレジスタンス」というコンビを以前から組んでおり（活動はゴミ拾い）、おちゃらけたやり取りが多かった。
　今回がエルフのおねえ・花畑チャイカの初3Dお披露目。濃い目に描きこまれていた2Dアバターがそのまま飛び出してきたかのような再現度。そしていつもどおりの掴みどころのないトーク。あまりにも花畑チャイカが落ち着かず動き、ツッコミづらいネタを言い続けているため、トークの進行をしていた剣持刀也が「あーめんどくせえ!　準備されたトークをしない!」と困惑するシーンも。花畑チャイカいわく「台本一文字も読んでない!」。観客からは絶えず笑い声が出続けていた。

　落ち着いた空気になった会場を一気に温めたのは、緑仙とえるによる『ETERNAL BLAZE』。2人の「みんなの声が聞きたい」という、コールを期待した選曲だ。ファンも有名なこの曲で一瞬でヒートアップ、練習してきたかのように自然とコールが入る。柔らかい高音が耳に心地よいえると、強く響き渡る緑仙の歌声の相性はバッチリ。
　サビでは2人がお互いにヲタ芸をするというネタも披露した。緑仙が3Dの姿を見せるのはこれが初。性別不詳な緑仙は、上着を脱いだデザインの衣装で、セクシーな声中性的魅力を振りまいた。トークでは会場に対して、ウェーブをするよう声をかける。ファンはばっちり力をあわせて、見事な光の波を一発で完成させた。

　家長むぎ、宇志海いちご、勇気ちひろのユニット「ぷりずむりりっく！」は、幼女2人（赤・青）と中学生少女1人（黄）という、かわいさの信号機。ステージで飛んだりはねたり走ったり、わちゃわちゃと動き回る様子にファンは大歓喜。
　歌はオリジナルソング『STARRY WORDS』。歌い終わって退場する時に、勇気ちひろが逆の袖に向かってしまい、慌てて戻ったところまさかの転倒。他の2人と観客は慌てていたが、勇気ちひろ本人によると「ファンサービス」とのこと。普段はみんなの妹にまわる家長むぎが、このユニットだとお姉ちゃん役なるのも新鮮だ。

　ラストを飾るのは、月ノ美兎、静 凛、樋口 楓の「JK組」。にじさんじ初代メンバーで、2018年初期からVTuberの道を切り拓き続けるトップランナー。3人が歌う『Dive with me!!!』はビッグバンド風のノリのいいナンバー。3人は大舞台慣れしているだけあって、歌もパフォーマンスも安定感抜群、会場とのトークも手慣れたもので、ファンを盛り上げ続けた。ライブのクライマックスにふさわしいパフォーマンスを見せてくれた。
　3人はひそかにTwitterでコール＆レスポンスの仕込みを行っており、ファンはしっかりチェックしていたのか、ばっちり返していたのが印象的。曲の後半、参加したライバー全員が登場。全員がリズムをとって踊る様子は、「にじさんじ」の賑やかさそのものだった。

2019年12月イベント開催決定＆2020年1月BD発売！

　ライブ後に重大発表が2つ公開された。ひとつはライブ映像のBlu-rayが2020年1月22日に発売されること。もう一つは12月8日に両国国技館でのライブ情報。今回参加した月ノ美兎、樋口楓、静凛、勇気ちひろ、鈴鹿詩子、森中花咲、える、椎名唯華、剣持刀也の他、すでに3Dアバターが公開されている笹木 咲、加えてジョー・力一、夢月ロア、鈴原るる、御伽原江良、戌亥とこが出演することが発表された。今まで3Dモデルを持っていないメンバーのため、これには観客大盛りあがりだった。

「にじさんじ」はごった煮感が魅力のひとつだ。女子高生もいれば、鬼もいるし、エルフのおねえもいれば、吸血鬼もいるし、ウミウシまでいる。世界観は全く統一されていない。

　今回のライブではこの混沌の妙味を活かしていた。ライバーたちが選曲し、振り付けを自らが考え、各々で流れを決めて進行。自主性が尊重された結果、ハチャメチャさを含めた全員の魅力が、むき出しのままステージにあがることになった。統一されすぎないから面白い。次のライブではまた別の個性的なメンツが揃っている。さらなる楽しい個性のぶつかり合いに期待したい。

DATA
にじさんじ Music Festival ~Powered by DMM music~
公式サイト：https://music.dmm.com/lp/nijisanjifes/
日時：2019年10月2日（水）
会場：幕張メッセイベントホール
出演：月ノ美兎、静 凛、樋口 楓、剣持刀也、える、鈴鹿詩子、本間ひまわり、家長むぎ、葛葉、叶、物述有栖、シスター・クレア、緑仙、ドーラ、宇志海いちご、勇気ちひろ、花畑チャイカ、竜胆 尊、椎名唯華、森中花咲

【セットリスト】
M1.pure♡paletワンダーランド：pure♡palet（物述有栖、シスター・クレア）
M2.Preserved Roses：竜胆 尊、鈴鹿詩子
M3.ロデオ：ChroNoiR（葛葉、叶）
M4.Buzz!!りムーブメント：usus（本間ひまわり、ドーラ）
M5.この闇を照らす光のむこうに：剣持刀也、森中花咲
M6.瞬き：椎名唯華、花畑チャイカ
M7.ETERNAL BLAZE：緑仙、える
M8.STARRY WORDS：ぷりずむりりっく！（家長むぎ、宇志海いちご、勇気ちひろ）
M9.Dive with me!!!：JK組（月ノ美兎、静 凛、樋口 楓）

INFORMATION

■にじさんじ冬の陣2019-2020
→詳細はこちら：https://event.nijisanji.app/2019winter/

■Virtual to LIVE in 両国国技館2019  12月8日開催決定！
→詳細はこちら：https://event.nijisanji.app/vtlryougoku2019/
開催日：2019年12月8日(日)　16:00開場 / 17:00開演
出演：月ノ美兎、樋口 楓、静 凛、剣持刀也、勇気ちひろ、える、鈴鹿詩子、森中花咲、御伽原江良、笹木 咲、ジョー・力一、夢月ロア、鈴原るる、戌亥とこ、椎名唯華
場所：両国国技館