『グランブルーファンタジー』の音楽と美術の底力を体感する。すべての騎空士の心に刺さる「GRANBLUE FANTASY ORCHESTRA -SYMPHONY IN BLUE-」レポート

2024.10.05 <PASH! PLUS>


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 Cygamesとサイゲームスの子会社であるCyDesignationとの共同制作によるソーシャルゲーム『グランブルーファンタジー』のイベント「GRANBLUE FANTASY ORCHESTRA -SYMPHONY IN BLUE-」が9月21日、22日に東京ガーデンシアターにて開催。本記事では9月21日夜公演のレポートをお届けします。

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 本イベントは『グランブルーファンタジー』10周年を記念した、8年ぶり2度目の開催となるオーケストラコンサート。会場には多数の来場者が訪れており、中には家族での参加と思しき姿も伺えるなど、本作が歩んできた道のりの長さを感じさせます。さらに、会場内外にはフラッグや10周年を記念して作成されたアニメPVの放映が行われていた他、有志の祝い花も!

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 会場内のホワイエでは『グラブル』イラストチームによる描き下ろしイラストの展示やコラボドリンク&フードの販売が実施されており、賑わいを見せていました。また、開演前には本公演のキービジュアルの登場キャラクター達による開場前アナウンスも実施。サンダルフォンとシエテ、カシウスとガレヲン、オロロジャイアとシエテなど、ゲームでは珍しい掛け合いもあり、騎空士(『グラブル』ユーザーの通称)必聴の内容となっていました。

 本公演は、『グラブル』を支える音楽の数々を、東京フィルハーモニー交響楽団による演奏のもと、同じく本作を支える背景およびキャラクターイラストとともに楽しめるイベント。騎空士として本作の音楽やイラストに触れたことのある人なら、『グラブル』の世界観を体全体で感じられる至福の時間となっていました。

※本レポートは『グラブル』のストーリーのネタバレ要素を含みます。

「GRANBLUE FANTASY ORCHESTRA -SYMPHONY IN BLUE-」9月21日夜公演レポート

第1部:知っている物語の知らない一面を体感する時間

 足音すら響く厳かな雰囲気の会場。そんな中で本コンサートのスタートを飾るのは、騎空士としては聞きなれたであろう楽曲『フレイメル島 -太古の工廠-』『天に散りし覇者との邂逅』のふたつ。プレイ中は何かと耳にする機会も多く、曲の全容もなんとなく掴めているはずの2曲ですが、そんな印象を一節で吹き飛ばすのは東京フィルハーモニー交響楽団によるオーケストラサウンドと、珠玉のアートワークの数々。

 背景美術をはじめとしたアートワークスの素晴らしさも本作の魅力であることは言わずもがな。肌にヒリ付く「圧」を感じるほどの生演奏が合わさることで、自室のスマホの前ではなく、溶岩を湛えた湖や強敵の眼前に立たされた時のような新鮮な気持ちを感じます。来場者も同じ気持ちに至ったのか、曲が終わる度の拍手にも力がこもっていたように聞こえます。

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 そんな会場の雰囲気を和ますように現れたのはMCのダーント役・星野貴紀さんとユイシス役・立花理香さん。加えて本作コンポーザー・成田勤さんも登壇し、成田さんが作家業20周年であることの喜びを口にしたり、次の曲目である『人間との戦い』は本作クリエイティブディレクター・福原哲也さんからタイトルが提案されたものだったことなど、様々なトークに花を咲かせ、来場者の肩の力を抜いていきます。

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 そんなトークの後に演奏される『人間との戦い』。本楽曲は黒騎士との戦闘BGMとして印象深い1曲ですが、コンサートではビジュアルを通して黒騎士=アポロニア・ヴァールの人生を追体験できるような演出がなされた内容に。どこか悲しさを感じるメロディと、美しく描かれたアートが、彼女が生きた過酷な人生を痛感させます。そして、炎の中に立つ黒騎士をバックに流れる、中盤からの激しく厳かな演奏は、戦いの中で決意を固めた彼女の心情を思わせます。

 主人公と黒騎士との共闘ののちの敵対、ゲームプレイの体験としては七曜の騎士という強大な力を表現している印象だった本楽曲。しかし、本公演の中では混迷する状況の中、大切なものを手放すまいとあがく彼女の心情を思わせる形ともなっており、ゲームのシナリオを最大限に味わう体験として、『グラブル』楽曲のポテンシャルをものがたる1曲となりました。

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 続いて演奏されるのは、普段のバンドサウンドと異なる雰囲気が印象的になる「バトル4」。こちらは騎空士お馴染みのイベントでもある「四象降臨」などで使用されている楽曲。原曲のロック調からオーケストラの雰囲気漂う壮大な音色へと変化した演奏が、大いなるボスへと挑むことになる本イベントの状況によりマッチした聴き心地です。

 続いてはメインクエスト『暁の空』編にて印象深い『ライヒェ島-人住まう魔窟-』と『ナル・グランデの罪』、そして成田さんも参加する『アウライ・グランデ』。『ライヒェ島-人住まう魔窟-』は、ゲストアーティスト・内藤哲郎さんと髙桑英世さんの和太鼓と篠笛によりナル・グランデ空域のオリエンタルな趣が強調されたものになっています。バックに描き出された雪原とどこか悲しげな和楽器の音色は、雪が覆い隠した景色のように、我々が知らない悲劇があったのではないかという気持ちを抱かせます。一方で、ナル・グランデ空域を巡る『暁の空』編を締めくくる「ナル・グレートウォール」戦BGM『ナル・グランデの罪』は、激しい音楽による始まりと目まぐるしく雰囲気の変わるメロディ、そして試練に挑む仲間たちの姿がナル・グランデでの冒険を思わせます。

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 成田さんも演奏に参加する『アウライ・グランデ』は、『星の旅人』編にかかわる楽曲で、ピアノの旋律に弦楽器が続くメロディは、旅路の中で起きた悲劇を慰めるよう。原曲もストーリーとあわせて悲しさを感じさせますが、オーケストラサウンドと合わさることでより感情を揺さぶる演目となっています。

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 そして、第1部を締めくくるのはゲストボーカルとして本作ヒロインのルリア役・東山奈央さんが参加する『Lyria』。東山さんがルリアよろしく元気いっぱいに登場して、指揮をしようとして失敗するコミカルな姿を見せて星野さんのツッコミを受けると会場からも笑い声が上がります。

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 実際の楽曲は、透き通るような東山さんの歌声の魅力をオーケストラによる演奏が増幅させ、さらにコーラス隊の歌声がメロディに神秘性を与えてどこか浮遊感を感じる聴き心地に。物語の始まりと果てしない旅路を想起させる歌詞ながら、生演奏では落ち着いたメロディとなり、フィナーレにふさわしい聴き心地を与えます。通常のライブコンサートとはまた違う魅力の出し方にオーケストラの底力を感じる曲目にて第1部は拍手の中で幕を下ろします。

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第2部:プレイした時の興奮を超えていく渾身の演奏を「見る」

 コンサート第2部はシナリオイベントや最新のバトルコンテンツなどにもフォーカスした内容。まずは、8周年記念シナリオイベント「星のおとし子、空のいとし子」より『命のカタチ』、7周年記念シナリオイベント「STAY MOON」より『Last Advent』が演奏されます。

 『グラブル』の世界を、星晶獣や調停者の視点から描いた点も印象的だった「星のおとし子、空のいとし子」。原曲でもピアノが印象的ですが、生演奏ではさらに存在感が際立ち、星晶獣の神秘性を感じさせる一方で、神秘である故の彼らの孤独も思わせます。

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 数々の思惑と策謀がうねりを上げながら結末へと向かう「組織」の物語を描いた「STAY MOON」を象徴する『Last Advent』は、管楽器が刻む特徴的なリズムが無機質で得体のしれない「月」と「機関」の不気味さと緊迫感、そしてそこへと向かう高揚感を与えます。そして後半に差し掛かると、多数の登場人物とその戦いが映し出され、オーケストラの演奏も熱がこもったものに。長きにわたる一大スペクタクルを言葉を使わずに表現しきっており、アドレナリンの分泌を感じる1曲です。

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 MCを挟んで最新コンテンツからの演奏楽曲として発表されたのは、『ユグドラシル・アルボスマグナ』『Dragon’s Circle -Hexachromatic-』の2曲。マルチバトル「ユグドラシル・アルボスマグナ」戦BGMである『ユグドラシル・アルボスマグナ』は、ドラマチックさを重視した楽曲とのこと。ハープやフルートがより強調されたメロディは、見ているだけで癒されるようなユグドラシルの姿を表現するよう。また、演奏の中には、万象を見つめてきた存在の切なさを現すような儚げな印象も漂います。

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 続く『Dragon’s Circle -Hexachromatic-』は、高難易度マルチバトル「天元たる六色の理」戦のBGM。現状の最高難度コンテンツのひとつであり、参加はもちろんのこと、討伐ができようとも音楽に聞き入ることが難しい手強い相手。今回のように腰を据えてその音楽を堪能できるというのは貴重な機会です。

  前提として、『Dragon’s Circle -Hexachromatic-』は原曲では電子音やバンドサウンドが使われている「六竜」それぞれの戦闘BGMがエッセンスになっていることから、非常に奥行きを感じる1曲となっており、これがオーケストラサウンドで表現されるというのだから、「音に威圧される」とすら感じる演奏にも納得というところ。六つの楔と相対することを表すような目まぐるしく変わるメロディもさることながら、六竜がこちらに襲い来るようなビジュアル、勇猛さ以上に緊迫感が増す最終局面のパートは彼らが超越した存在であることを否応なしに感じさせます。

 第2部も終盤に差し掛かっての演目は、成田さん曰く『大星晶獣との戦い』のアレンジ楽曲でもあるという、10周年記念シナリオイベント「HEART OF THE SUN」フェニックス戦BGMの『天と光、死と生』。豪華なオーケストラサウンドにより壮大さが増した本楽曲は10周年にふさわしい内容となっています。聞き覚えがありながらも確かに違うものと感じられる旋律は、姿は変わらずとも超常の存在に少しずつ足を踏み入れていく主人公たちのよう。クライマックスに凛として佇む姿は、思わず当時のイベント内での感動を思い起こさずにはいられない光景です。その後の第2部最後のMCでは、星野さんが「アレ」と何かを示唆。この先の展開に期待が高まります。

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 そして始まる最終楽曲は、シナリオイベント「ロボミ」BGMの『ロボミ』! 指揮者の栗田博文さんが観客に手拍子を促すと会場全体で本楽曲を楽しみます。金管楽器の音色を中心とした勇ましいメロディは、往年のロボットアニメの音楽の熱さを感じさせます。ユーザーにはなじみ深い壊獣の貴重なアートも大写しとなり、騎空士としてこれまでの演目とはまた違った方向で嬉しくなる光景です。

 そして、「ロボミ」シリーズはロボットアニメ的演出もさることながら、母子、兄弟、親子、そしてそれを取り巻く人々……と家族を描く物語であることも魅力のひとつ。10周年を祝うオーケストライベントの第2部のフィナーレが会場全体で楽しむ『ロボミ』であることにも、ある種のメッセージを感じます。

 そして、第2部を締めくくる力強い演奏は、会場全体の大きな「ブラボー!」との声と拍手により締めくくられた…ように見えました。

アンコール:定番&人気の音楽をオーケストラサウンドで聞くという贅沢

 星野さんが口にした「アレ」とは、つまりアンコールのこと! 『ロボミ』終了から鳴り止まない拍手を受け、アンコールが開幕! 続けざまに『アウギュステ列島 -白沫の瀑布-』『ローズクイーン』の演奏が始まります。

 毎年夏にはトンチキな海洋生物が登場するアウギュステ列島。しかし、弦楽器をメインとした揺蕩う水のような優雅なメロディは、清らかな水を湛える一流リゾート地そのもの。美しい都市や爽やかな海の風景が映し出されると、会場が臨海都市であることも手伝って、まるでクルーズを楽しんでいるような気持ちにもさせられます。

 マルチバトル「ローズクイーン」戦BGMである『ローズクイーン』は、ユーザーからも人気の一曲。成田さんが参加するオーケストラサウンドは戦いの勇ましさを強調します。そして、ゲストボーカルとしてサプライズ登場となった霜月はるかさんの歌声も印象的。美しいバラの演出に彩られた美声は勇ましい音楽との二面性を生み出し、まるでローズクイーンのミステリアスな魅力を表現しているよう。

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 至福のアンコールはあっという間にラストの時間に。ルシフェルの「問い」から始まったアンコール3曲目『どうして空は蒼いのか』では、ゲストアーティストとしてイーリアンパイプスの髙桑英世さんとティンホイッスルの野口明生さんが参加。原曲でも印象的な音色を残す両楽器は生演奏ではさらに主張を強めます。

 その音色とどこかのどかさも混じる背景に牧歌的な印象を感じる本楽曲。しかし、『どうして空は蒼いのか』シリーズの3部作にて描かれた天司と堕天司、星の民を巡る物語を知っている者には、その場所で起きていた悲劇と彼らの心情を思い起こさせてセンチメンタルな気持ちを抱かせます。

そして、それ以上に脱帽してしまうのは、演奏も壮大になってゆく後半部分。サンダルフォンの苦悩や悲しみを煽りながらも、新たな夢に向かって歩みだす彼のこれからの物語を表現するラストの余韻には思わず聞き入ってしまいます。

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 正真正銘のラストとなる楽曲は本作のメインテーマ! ゲーム中はもちろん、イベントに生配信にと恐らくユーザーが最もよく耳にする機会が多く、この場にいる全員がその魅力を理解している楽曲。それだけに、オーケストラの力を実感できる演目です。

 何かの始まる予感に不安まじりの高揚感を抱くイントロ、冒険心をくすぐるメインパートは豪華なサウンドにより観客の感情を高ぶらせます。そのまま感情を高ぶらせる後半部分を様々なシナリオイベントのビジュアルが彩ると、勇ましいようで物語を振り返る時の寂しさも与えます。始まりのようで終わりにも感じる不思議な音楽がフィナーレを飾ると、10分近く続く拍手と歓声によりオーケストラコンサートは盛況のうちに締めくくられました。

「GRANBLUE FANTASY ORCHESTRA -SYMPHONY IN BLUE-」終演後コメント

指揮者・栗田博文さん

2日間4公演、たくさんの曲数で大変でしたが本当に楽しかったです。
お越しくださった騎空士の皆さんに楽しんで頂けていれば嬉しいです!!

グランブルーファンタジー コンポーザー・成田勤さん

「GRANBLUE FANTASY ORCHESTRA -SYMPHONY IN BLUE-」へお越しの皆様、本当にありがとうございました!
楽しんで頂けましたでしょうか。
まさに10周年にふさわしいコンサートになったのではないかと思います!
こうしてコンサートが開催できたのも、ひとえに皆さまのお陰だと思います。
本当に感謝しております。
これからもグラブルとその音楽を、どうぞ宜しくお願いいたします!

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『グランブルーファンタジー』公式サイト
『グランブルーファンタジー』公式X(旧Twitter)
(C) Cygames, Inc.

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